イーロン・マスク氏のツイッター社買収は、どうやら元サヤに納まりそうだ。
テスラCEOのマスク氏が突如、買収を言い出して今年4月に合意したかと思えば、いきなり7月には撤回を言い出し、10月17日から審理が始まる法廷闘争は泥沼化すると思われていた。だが、10月3日にマスク氏がツイッター社に送った書簡で買収を再提案していたことが判明。しかも、買収費用をディスカウントさせるために撤回したと見られていたが、条件は最初と同じ1株54.20ドルだという。
「さすがに負けるかもしれない法廷闘争を避けたかったからだと見られています。裁判で互いに傷つけあった末に結局マスクが負けてツイッター社を買収せざるを得なくなれば、まず1億ドルを超えるとされるマスクの訴訟費用がかさみ、さらに訴訟で価値が毀損しているかもしれないツイッター社を購入することになり、そうなると同じく高額な訴訟費用を拠出した同社を買うことにもなるわけで、まさにリスクばかり。公判前の証拠開示手続きでも、判事はマスクに不利な判断を下していました」（経済ジャーナリスト）
となるとマーケットはもちろんこれを好感し、ブルームバーグ社が3日にこれを伝えると、翌4日のツイッター社の株は跳ね上がり、取引が2度停止した後には20％以上も値上がりした。
マスク氏はこれまでにも証券取引等監視委員会（SEC）や全米自動車労働組合、大統領と、およそ周囲のあらゆるものを敵に回して訴訟を行い、ひるむことがなかったので、暴れん坊の彼としては非常に大きな方向転換と言える。
では、少しはしおらしくしているかと思いきや、もちろんそんなことはなかった。同3日にはツイッターでウクライナ戦争の「和解案」を勝手にツイートしては、ユーザーの賛否を募った。
「条件は4つです。①ウクライナ4州の住民投票を国連監視下でやり直す、②クリミアはロシア領とする、③ウクライナに依存して不足しているクリミアへの水の供給を保証する、④ウクライナは中立を維持する、というもの。この誰が見てもトータルでロシアが得をすることはあっても損はない提案にウクライナは当然反発。ゼレンスキー大統領はこれに対し、ロシアを支持するマスクとウクライナを支持するマスクのどちらが好きか、という投票をツイッター上で呼びかけました」（同）
マスク氏とウクライナで言えば、ロシアの侵攻開始直後にスペースX社の衛星通信システムをウクライナに提供して、両者は良好な関係にあった。しかし、ツイッター社へ和解提案した同じタイミングでの和平案の提示には、自分は現実をとってツイッター社に譲歩したのだからウクライナもロシアに譲歩すべきと言っているようで、ウクライナの反発を買うのは火を見るよりも明らか。
結局、お騒がせぶりは変わっていないのだった。
（猫間滋）
