東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、贈賄容疑で逮捕された「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲容疑者が、大会組織委員会会長だった森喜朗元首相に現金200万円を手渡していたと産経新聞が報じたのは1日のこと。
同紙によれば、東京地検特捜部の調べに対し青木容疑者は、病気療養中だった森氏へお見舞いとして現金200万円を2回に分けて直接手渡したと供述しているという。
「報道を受け、共同通信やTBS、東京新聞をはじめ、週刊誌系のネットメディアが追随。森元首相側は『高橋氏らが逮捕され刑事事件になっているので、回答を控えさせて頂きます』との回答を繰り返すばかりです。しかし、青木前会長が誰かと会う際は、必ず前会長の部下が同席して会話を録音し、面会記録を作成していたといいます。当日録音された会話は既に特捜の手に渡っており、今後捜査でその内容を精査していくことになるはずです」(テレビ局報道記者)
報道によれば、現金授受があった時も森氏は会長の任にあった。組織委の理事や会長は「みなし公務員」と規定されているため、金銭の授受があれば贈収賄が成立する可能性はあるが、立件するためには相当高いハードルがあるという。
「額の多寡に関係なく、便宜供与など明確な意図が認められれば立件は可能です。ただし今回はがん治療の見舞金で、しかもそれを堂々と渡したとなると、その弁解は通りやすくなるはず。さらに捜査対象が元首相ともなれば、まずは徹底的に証拠固めが必要になります。はたして特捜部が200万円の授受でそこまでやるかどうか。ただ、メディアでこれだけ大きく報じられた以上、特捜部としても動かないわけにはいかないでしょうから、現金を渡したとされる経緯や目的について慎重に捜査を進めていくと思われます」(同)
今回の“見舞金問題”に関し、元財務省官僚で弁護士の山口真由氏が情報番組「ゴゴスマ〜GOGO!Smile!〜」(TBS系)に出演して、興味深い発言をしている。山口氏が言うには、
「特捜ってもともと旧田中派、(現)平成研究会の田中角栄、竹下登とか、金丸さんとか、そこらへんが特捜の牙にかかることが多くて、清和会系は特捜の捜査から免れてきたと言われてきたんですね。安倍さんのお父様はじめ、森さんもそうですけど」
さらに、森氏の捜査については、
「森さんを今回、本当に特捜が対象にしているのだとすると、権力構図が大きく変わって、権力を撃ちにいく特捜というのが、戦いの対象を平成研究会から清和会の流れに変えたのか。森さんまでやるのかどうかはかなり注目されると思うんですけど」
と読み解いてみせた。
特捜と清話会の微妙な関係がほの見えるコメントだったが、ともあれ、捜査対象が今後がどこまで広がっていくのか注目していきたい。
(灯倫太郎)