奇跡が現実になるかもしれない。横浜DeNAが凄まじい勢いで快進撃を続けている。首位のヤクルトを突如驚異的なペースで猛追。最大17.5あったゲーム差を4にまで縮めた(8月26日時点、以下同)。98年以来24年ぶりとなるセ・リーグ優勝の声も高まっているが、その原動力となる「強さ」と「激変」の秘密に迫る─。
セ・リーグ首位を独走していたヤクルトをDeNAが突如として猛追。8月は8連勝を含む16勝4敗、本拠地17連勝と破竹の勢いで牙城に迫ってきた。8月5日に借金を完済するまで、最大借金「9」まで抱え込んでいた瀕死の状態だったのに、シーズン折り返し地点から別人のように息を吹き返したのだ。
実はDeNAの球団内から「ある意味で巨人のおかげじゃないか」との声が多数出ている。球宴明け開幕カードの相手だった巨人にコロナ感染者が大量発生して、7月29日からの3連戦が延期。後半戦初戦が4日遅れで8月2日の広島戦となり、快進撃のスタートとなった。
「実は前半戦終了時点でチーム状態は投手、野手ともにかなりの疲労傾向だった。それが後半戦開幕カードがなくなったことで、球宴休みも挟まって丸々8日間の調整期間が作れた。ここでリセットできたことがチーム全体にとって大きかった」(球団関係者)
「真夏の激変」の理由はそれだけではないようだ。チーム関係者は「あの一件があったからこそ、ここにきて選手たちの猛奮起につながっている」と指摘する。
それは沖縄・宜野湾キャンプが間もなく打ち上げとなる2月下旬、宿舎のホテル内で行われた全体ミーティングでの出来事だったという。佳境に入ったところで三浦大輔監督(48)が1軍全選手、コーチらスタッフを前に「一言、言わせてください」と口にすると、カッと目を見開いて「俺は今年に全てを賭ける。お前たちも応えてくれ!」と熱く言い放ったというのである。
「あまりの迫力に目の前にいた選手らはシーンと静まり返ったが、一瞬の沈黙後、一斉に大きな拍手が起こった。三浦監督は基本的にソフト路線で滅多に感情を表に出さないが、あの時だけは違った。まるで鬼神のような姿でした。今季が契約2年目で、いわばラストイヤー。その覚悟を前面に出し、選手たちを鼓舞したんです。実際に選手たちも大きく感動し、口々に『監督があそこまで言ったんだから何とかしなければいけない』と誓い合っていました。シーズン前半戦まではなかなか結果に表れませんでしたが、後半戦スタート前の全体練習で主将の佐野恵太(27)や宮﨑敏郎(33)らが選手たちに『もう一度、監督の言葉を思い出そう』と言ってチーム内のネジを巻き直したとも聞いています」(チーム関係者)
DeNAの快進撃は、覚悟の発言をぶち上げた〝番長効果〟が口火を切ったというのだ。
*三浦大輔監督「侠気語録」(2)につづく