これはセンバツ大会中にも聞かれたことだが、「今年のドラフト会議では1位指名選手に高校生がいないかもしれない」と囁かれている。高校野球のレベルが落ちたという意味ではない。ドラフト対象の1学年下、2年生球児たちの多くが昨年度の各大会で活躍し、「スーパー1年生」と呼ばれていた。その“比較”もあるのだろう。
「高校生の時期に体が完成する『早熟タイプ』と、卒業後に体が大きくなって、そこからレベルアップしていくタイプもいます。今年の3年生は後者のタイプが多いのでしょう」(球団スカウト)
卒業後に大きくなるタイプ。言い換えれば、「伸びしろ」があるというわけだ。
その1人と目されているのが大会2日目(8月7日)の第2試合に登場した、愛工大名電の左腕・有馬伽久投手。
「今大会で注目される左投手は何人かいますが、有馬は140キロ台後半の球速が出る数少ない逸材です。今年、大きく成長した1人」(前出・同)
同校もコロナ禍による活動制限で苦しめられた。十分な練習時間が確保できないなか、映像チェックなどの“学習”に取り組み、有馬は直球がシュート回転する欠点を見つけた。そこから走り込み量を増やし、ボールのリリースに気を配るなど、練習内容も少し変えてきた。前評判ではスライダーが良いとのことだが、「打者・有馬」をチェックするスカウトもいるそうだ。
「1年生からベンチ入りしていますが、当時の背番号は『9』。今夏の愛知県予選では5割3分3厘の驚異的な打率を残しています。1回戦の星稜戦でも2安打と打撃で気を吐いている」(アマチュア野球担当記者)
二刀流でやっていけるかどうかはともかく、投打ともに“卒業後に伸びる逸材”といえるだろう。
愛工大名電には元中日投手・岩瀬仁紀氏の長男の岩瀬法樹投手も在籍している。168㎝と小柄だが、初戦では父親さながらに9回に抑えとして登板。こちらも楽しみである。
(スポーツライター・飯山満)