競馬界ではかねてから、飼葉(エサ)の重要性は認識されてきたが、00年代に入った頃から馬用サプリの進化とラインナップの充実に後押しされ、さらにその存在感が増してきた。厩舎関係者が語る。
「話題の『グリーンカル』と同じカルシウム摂取系のサプリだけを見ても、カキの殻や石灰岩など原材料の違いから数十種類もの商品がある。それほど今の競走馬用サプリは細分化されていて、摂取できない栄養素はないぐらい。飼葉にどのサプリをどれくらい入れるのか─。近年の厩舎が最も力を入れるポイントです」
飼葉を準備する際は、記者などの部外者が立ち入り禁止になるほど、配合比が厩舎のトップシークレットになっている、まさに「機密情報」なのである。
「究極的に言えば、合法的な範囲で馬をどれだけ興奮させて走らせるかが調教師の腕の見せどころになる。例えばふだんの飼葉に油脂成分を加えれば、馬は興奮しやすくなると言われています。それだけでは折り合い面での不安が出るので、強めに調教して行きすぎないようにするなど、もはや食事での強化を基準に調教メニューを組み立てるのは当たり前です。そのため1頭ごとに配合比は異なりますし、レース当日『勝負飼葉』を食べさせたり、手を替え品を替え、いろいろ試行錯誤をしている。栄養に関係のない、ただの香料を混ぜることもあります。イチゴ味にすると、飼葉をモリモリ食べるんですよ(笑)」(厩舎関係者)
他厩舎との差別化を図りたいあまり、高級サプリをバンバン使用したり、新商品と聞けば、すぐに食指を伸ばす厩舎も少なくない。
「馬主の間でもよく『あの厩舎は飼葉代が高いから』なんてことが話題になります。サプリの中でも牛の胆石が原材料で強心効果がある『牛ゴ黄オウ』という漢方のサプリなどが超高級品として有名。1キログラムあたり300万円と高額なので、おいそれと与えるわけにもいかず、GⅠを勝つような一流馬に限られますけどね」(厩舎関係者)
賞金をガッポリ獲得するような馬であれば、300万円のサプリも安いというわけだ。