線状降水帯による8月3〜5日の大雨で大きな被害をもたらした東北・北陸地方。なかでも鉄道への影響は深刻で、米坂線の羽前椿(山形県飯豊町)〜手ノ子(同)間の小白川に架かる「小白川橋梁」、磐越西線の喜多方(福島県喜多方町)〜山都(同)間の「濁川橋梁」がそれぞれ崩落し、復旧までにかなりの期間を要する見込みだ。
さらに五能線でも橋脚損傷などにより、岩舘(秋田県八峰町)〜深浦(青森県深浦町)間、大規模な土砂流出があった奥羽本線の東能代(秋田県能代市)〜大館(同大館市)間も、運行再開は8月中旬頃になる予定だという。
加えて過去の災害によっていまだに復旧を遂げていない路線も少なくない。今回の水害により新潟方面から南東北内陸部に向かうルート2本が不通となったが、残り1本の只見線も11年の新潟・福島豪雨で橋が崩落しており、現在も一部区間が代行バスのままだ。
毎年、夏のこの時期はJRグループ全線の普通列車乗り放題「青春18きっぷ」の利用期間。この制度を使って旅を楽しんだ経験のある人も多いことだろう。だが、こうした昨今の大雨災害によって18きっぷの利用もままならなくなっている。
「新庄(山形県新庄市)〜余目(同庄内町)間の陸羽西線は、トンネル工事の影響で24年まで全線運行がストップ。鉄道で東北を横断するルートのうち、無事なのは盛岡から大曲を経由して秋田に向かう田沢湖線・奥羽本線ルートくらいです。しかし、この区間は秋田新幹線に比べて在来線の運行が少なく、東北でも北に位置します。そのため、青春18きっぷ利用者はもちろん、一般の旅行者や帰省客もルート変更やキャンセルを強いられています」(鉄道ジャーナリスト)
そんな中、先月28日にJR東日本が公開した「ご利用の少ない線区」によると、橋の崩落箇所を含む区間は陸羽西線は1日の利用客が429人で営業係数(100円の営業収入を得るのにかかる経費)は2671円、米坂線は248人で同係数が4598円という超赤字路線だった。ネット上では《このまま廃止になるのでは》と心配する声も…。
「おそらく今回は大丈夫だと思います。でも、北海道では16年の台風被害を受けた根室本線の東鹿越〜新得間の復旧を放棄し、現在は廃止を視野に入れた協議が行われています。不採算路線のローカル線の場合、今後は同様のケースが増えるかもしれません」(前出・鉄道ジャーナリスト)
赤字に加えて災害の追い撃ち。心おきなく鉄道の旅を満喫できるのはいつか。
(高島昌俊)