元警視庁SPが沈黙を破った!(1)2発目の発射は阻止できた

 安倍元総理の銃撃事件では、奈良県警の警護の怠慢が指摘された。仮に警視庁所属のSPが配備されていたら、事態は違っていたのではなかろうか。かつて、かのエリート集団に所属していたOBが、そのお粗末さの裏にある問題点を指摘する。

「いろいろなVTRを観させてもらいましたが、背後を警備していないことはお粗末そのものです。元首相の上半身は、誰にも守られないまま危険にさらされていた。警視庁ならありえない。1発目の音で安倍元首相が振り返った時、警備の人間は何をしていたのか。安倍元首相の周囲を見渡すと、すでに異常に気がついて、後ずさったり、うつ伏せになったりしている人もいました。(致命傷となった)2発目が発射された時までに時間は数秒あった。2人の警官が安倍元首相と山上容疑者の間に入り、なんとか守ろうとしましたが、防弾カバンで銃弾をかわすのも遅すぎた。撃たれた後で走っていって、相手を取り押さえたところで、もう取り返しがつかないんです」

 安倍元総理の銃撃事件について苦々しく語るのは、複数の映像を見たというH氏(42)。かつて警視庁所属のSP(セキュリティポリス)を16年間務め上げた。SPとは、要人警護を専門とする、警視庁直属の警備部警護課警察官である。

 今回の事件に関して、H氏はあまり触れたくない様子だったが、重い口を開き続けてくれた。

「通常であれば、安倍元首相のような要人の警備は両脇にSP、後方にも安倍元首相を背にして、周辺を見渡すSPか警察官がいなければいけません。完全に不十分な警備体制でした。一部の人間だけは特殊訓練を受けたSPだと聞きましたが、残りは警察官や一般の警備会社の警備員。知識もないのに警備なんてできるわけがない。まして演説を聞いている聴衆に気を取られ、背後の警備を怠るなど、ありえないことです」(以下、「」内はH氏)

 H氏は「手製銃」は煙の量が非常に多いことを指摘。1発目の発砲で発生した煙に気がつかなかったことを疑問視する。

 粗悪な拳銃は黒色火薬を使うため、一歩、また一歩と標的に近づかなければ「殺害」という目的など達成できない。命中精度も決して高くないからこそ、至近距離で発砲したのだろうが、少なくとも2発目の発射阻止は十分に可能だったのではないか、と疑問を呈するのだ。

「安倍元首相の側近だったというSPも入ってはいましたが、非常に不慣れな印象を受けた。誤解を恐れずに言えば、元首相の命を身を挺して守るという姿勢が希薄に見えました」

 一瞬の隙を突かれた事件だったことは確かである。

〈フリーライター・丸野裕行〉

ライフ