今年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻以来、ロシア兵による一般市民への暴行や拷問、虐殺が次々と明らかにされるも、相変わらず戦争犯罪についての疑惑を全面否定するロシア。
そんな中、3月下旬にロシア軍が撤退し、少なくとも426人の遺体が見つかったとされる首都キーウ近郊のブチャで、ロシア軍が市民を拷問し、殺害したとされる地下室が25日、報道陣に公開され、関係者に衝撃を与えている。
この部屋は四方をコンクリートの壁で仕切られており、以前、倉庫として使われていたようだが、
「地下室を案内したウクライナ軍兵士によれば、壁には複数の弾痕が残っていて、発見時、入り口に近い部屋では民間人男性3人の遺体が無造作に転がされていたのだとか。兵士は『ウクライナ軍兵士や警察官などの所在を突き止めるため、この部屋でかなり壮絶な拷問があったと思われる』と語っており、OSCE(ヨーロッパ安全保障協力機構)の報告書でも、ブチャにあるキャンプ場で、ロシア軍が市民に対し水責めなどの拷問を行い、全身にやけどや傷のある多くの遺体が見つかったことが確認されています。この地下室に残された数々の痕跡も、ここで拷問や殺害があったことを裏付ける証拠と言えるわけです」(軍事ジャーナリスト)
ブチャのスコレクシカリブツカ副市長は取材に対し、「殺害された市民のことを国際社会に明らかにし、町で殺害を行った者をすべて特定して裁きを与えたい」とコメント。これらの行為をロシアによる戦争犯罪として国際社会に訴えていきたいとしている。
「BBCの報道によれば現在、ウクライナ検察が、ロシアによる戦争犯罪と侵略犯罪の疑いがあるとして調査中の事案は2万1000件以上。同局のニュース番組『アウトサイド・ソース』に出演したウクライナのウェネディクトワ検事総長は、1日に200〜300件の戦争犯罪の報告を受けているとして、多くは欠席裁判になることは認めつつ、訴追を続けるのは『正義の問題』と言葉に力を込めています。同氏によると、5月の時点ですでに約600人の容疑者を特定し、80件について起訴の手続きを始めたと発表しており、今後案件が増えることは必至でしょう」(同)
かつてゼレンスキー大統領は、ビデオ演説のなかで「すべてのロシア兵の母親に見てほしい」と呼びかけ、首都キーウ近郊の町で見つかった遺体の様子を描写しながら、こう訴えたことがあった。
「平和な都市の普通の市民が、なぜ拷問されて死んだのか。なぜ女性がイヤリングを耳から引きはがされ、絞め殺されたのか。どうしたら子どもたちの前で女性に性的暴行を加え、殺害できるのか。なぜ戦車で人々をつぶしたのか……。こうした罪を犯した者は見つけられ、罰せられるだろう」
犯罪者らが公正な場所で、公正に罰せられることを望んでやまない。
(灯倫太郎)