「ATMストップ」で週末破産も!?今こそ知っておきたい銀行の変化

 2月9日の0時から12日の8時まで、みずほ銀行のATMがまたしてもストップする。先月の12~14日、成人式を含めたよりによっての3連休に休止した時には、「この週末、300円で過ごさねえといけねえ…」と“週末破産”というべき状況に追い込まれた人も少なくなかったのではないか。昨年6月から行われている新システムへの移行に伴うATMストップは、7月にもう1回行われてやっと終了する。

 現在はネット銀行が24時間365日取引可能だったり、提携先のコンビニATMで手数料が優遇されているなど、以前の銀行ではないサービスが存在し、普段から“少しでもお得な”銀行選び&利用をしている人はそのメリットを享受している。銀行をお金の“預け先”くらいにしか考えていない人は、そういった機会メリットを逃していることになる。

 例えば、昨年10月から始まった「モアタイムシステム」という制度はどのくらい知られているのだろう。全国銀行協会(全銀協)は10月9日から、24時間いつでも他行口座にお金を即時に振り込める新システムを稼働させた。銀行の口座振り込みシステムは、1973年に稼働させたシステムで運用されているが、土日祝日の振込処理に対応していないなど問題があった。だから、これを解消しようと、システムを改めたのだ。

 そしてそれが昨年10月から始まったのだが、そもそもがこのことを知っている人がそんなにいるとは思えないし、ましてや、システムをイジっている最中のみずほ銀行はこれに対応していないし、地銀、第二地銀の全てが対応しているわけではない。自分が使っている銀行が対応していても、取引の相手先が使っている銀行が対応していないのでは、無用の長物なのだ。逆もまたしかり。だから現在は、結局はどんな銀行に口座を持っているかで、知らないうちに「損して」いることになる。

■銀行が儲からない時代

 こういったサービスのバラつきが見られるのは、“殿様商売”だった銀行業界全体が古臭く、顧客サービスが先送りされてきたからだ。だが、時代は変わった。銀行といえども、庶民にも頭を下げねば生き残れない時代を迎えている。低金利時代でカネを貸すメリットは少ないし、低い成長社会ではそもそも国内に借り手が見当たらない。銀行は儲からない時代なのだ。だからムダを捨て、少しでも儲かる企業体質への転換を迫られている。

 そんな銀行業界を代表する3大メガバンクは一昨年、ほとんど一斉に大胆なリストラ計画を発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループは9500人分の業務量削減を、三井住友フィナンシャルグループはやはり4000人分の業務量削減、みずほフィナンシャルグループは具体的に1万9000人分の人員削減にまで言及した。ネット銀行以外の旧来銀行は多くの地域に有人店舗を抱え、メガバンクであれば全国どこでも同じサービスを受けられる、地方における郵便局のようなユニバーサルサービスを維持させているからだ。

 全国一律のサービスを維持するということは、多大なランニング・コストがかかるということだ。だが、ネットに慣れた若年層は、わざわざ店舗に出向く方が面倒くさい。だいたいの銀行業務はネットで済むし、さらにAIが進化すれば、銀行の支店に人は要らなくなる。みずほリストラ策の具体的な人員削減は、要は、このことを意味している。動かざるを得ないのだ。
 
■一つのサービスに特化した店舗も
 
 この間の事情を、当の現役メガバンク行員がこう指摘する。

「かつてのような、『オラが使っている銀行だから』というような預金者の口座維持費はコストがかかるだけ。銀行としてもお客は選別したい。そのために今は各行が次世代を見据えて具体的にどんな戦略を採用すべきか虎視眈々とプランを煮詰めている段階。ちょうど、みずほがシステム改変を終了したタイミングに具体的なプランが明らかになるかもしれない。とりあえずは、昨年11月に東京三菱と三井住友の2メガバンクが地域でのATMの共同利用を2019年前半より開始すると発表したのが大きな動き。地銀で言えば、今までは各県で仕切られていた銀行の越境合併が相次ぐのは必至でしょう」

 これは2016年に発表された、茨城県の地銀の常陽銀行と群馬県の足利銀行が県の区別を超えて合併した。こういった例が相次いで、より旧態依然とした住みわけを打破するボーダーレス化が進むというのだ。

「また先日、富裕層をそもそもの顧客とするあおぞら銀行が、2019年4月から窓口で一切の現金を扱わないという、相談業務だけの支店を創設するという発表をしましたが、こういった、サービスが一律でない、地域や顧客に合わせて何らかの業務に特化した支店の創設が相次ぐと思います」(前出・現役メガバンク行員)

 と、銀行業務の個別化が進むという。例えば、午後3時に銀行窓口が閉まってしまうという不便に対しては、かなり以前からりそな銀行が5時までの営業を打ち出しているし、繰り返しになるが、ネット銀行では24時間取引が可能だ。そういった、個別のお客のサービス競争がいよいよ本格化するということだ。

 銀行が生き残りをかけて顧客を選別すると同時に、利用者としてもそこで提供されるサービスで銀行を選ばなければいけない時代に突入しているのだ。
 
(猫間滋)

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