日曜日がくる前に金を引き出すか…。そう思うみずほ銀行の利用者は少なくないかもしれない。いまだ記憶に新しい2月28日の日曜日に起こったシステムトラブル。全国のATMに不具合が生じ、ピーク時でその数なんと約4300台、全ATMのおよそ8割にも上った。
明けて3月1日の月曜日、同行は会見を開いて謝罪。それによると、定期預金のデータ移行作業45万件と月末処理の25万件が重なってシステムに過度の負担がかかったのが原因だという。だが、そんなことは想定内のはずだったのだが…。
「みずほ銀行では02年と11年にも大規模なシステムトラブルがありました。そのトラブルがあった11年から本格的なシステムの開発に着手したものの、いつまでも完成しないので『IT界のサグラダファミリア』と呼ばれていました」(金融ジャーナリスト)
そうして完成したシステムについて、みずほ銀行では18年6月から約1年かけて断続的に週末のATMストップを続けるという利用者へのしわ寄せを経て移行したものの、3度目となるシステム障害を起こしてしまったのだから目も当てられない。だから「またか」という話にもなるのだが、2002年と2011年に発生した過去の2回は、口座振替や振り込みの遅延にとどまっていた。今回に至ってはATMが止まっただけでなく、通帳やキャッシュカードをATMが飲み込んだまま吐き出せなくなり、備えつけの電話は営業時間外でつながらないという、顧客には大迷惑のトラブルだった。だからSNSでは、
「みずほはキャッシュカードも奪ってキャッシュレス化に貢献」
などと揶揄されてしまう始末。同行では1月18日から紙の通帳は原則廃止してデジタルへの移行を促し、それでも発行する場合には1100円を徴収するようになったばかりなだけに、恨み節も出てくるというもの。
「みずほ銀行の勘定系システムは『MINORI』と名づけられたものです。開発にはトータルで約4500億円を費やし、開発に動員されたベンダーは1000社にもわたりました。日本のベンダーは約1万社あるので、国内の10社に1社が携わったことになります」(前出・金融ジャーナリスト)
そんな歴史があるみずほ銀行のシステム問題は「日本を代表するブラックボックス」とも呼ばれ、昨年2月に日経BP社から「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」という本が発売された時には、技術的な中身の本にもかかわらず刊行からわずか2日で重版がかかったほど関心を持たれていた。
だが今回、またしてもブラックボックスぶりが露呈してしまった。「MINORI」の名称の由来はおそらく、「みずほ(瑞穂)」が実を結んで「実り」となったという意味なのだろうが、これでは「実り(みのり)」ではなく「祟り(たたり)」とも言えそうだ。
(猫間滋)