日本は高すぎる!? 40年以上も変わらぬ「振込手数料」に政府と公取委がメス

 老舗の料理屋の味は変わらないことを求められるが、本来は変わるべきなのに40年以上も変わっていないものがある。銀行間の振込手数料だ。1979年の2月以降なんと40年以上もの長きにわたり、3万円未満は117円、3万円以上は162円でずっと固定されたままなのだ。

 この銀行間手数料を引き下げるよう安倍晋三首相が麻生太郎・金融相に具体的な検討を行うように指示したと、6月23日に報道された。首相は16日に官邸で行われた未来投資会議でも手数料を見直すことの必要性を語っていた。同会議は、将来的な成長が見込める分野について成長戦略と構造改革を進めるべく設けられたもので、識者や専門家などで構成されている。

「銀行の手数料は、本来は交渉によって決められるはずのものなんですが、長い慣例の中で固定されて変更されずにいたんです。おそらくは今回の政府の動きの地ならし的な意味が含まれているのでしょう、これより前に公正取引委員会が固定化の実態を調査して、4月21日には手数料の引き下げを求める趣旨の報告書を発表しています」(金融記者)

 それによれば、3万円以下の振込でその手数料を300円とした場合、117円がもちろん手数料としてかかり、残りの183円が仕向銀行の取り分となる。公取委はこの額を、「事務コストを大幅に上回っている」とし、銀行の不自然な儲けの構造を指摘。さらには、銀行間で「変更交渉が行われた事実は確認できなかった」ことを確認した上で、諸外国の振込取引で「銀行間手数料に相当する手数料が発生している事例は確認できなかった」としている。つまり、日本の銀行は国際的に見ても例外的に、単なる慣習に従う形で暴利を貪り続けてきたことになる。

 だからこれには是正が必要で、さらには、銀行や信金などの既存の金融機関のみが取り引きを結ぶ全銀システムに接続可能なこと、各金融機関が独自に構築したシステムを特定企業との取引で強要していることのこの2点は、独占禁止法に違反している恐れがあるともしているのだ。

「こういった実態について未来投資会議は、フィンテック企業の参入障壁になっていると判断、キャッシュレス化を遅らせている大きな一因と問題視しました。だから安倍首相が本格的な見直しについて指示を下したというのが大まかな流れということになります」(前出・金融記者)

 何ら競争原理が働くこともなく、慣例というだけでずっと儲け続けてきた銀行業界は“村社会”と言うほかない。今後、大きなメスが入ることになりそうだ。

(猫間滋)

マネー