口座凍結された預金者を強制排除!中国から消えた「8000億円事件」の深い闇

 中国の複数の銀行で、顧客40万人分、総額400億元(約8000億円)の預金が引き出せなくなっている問題で、河南省鄭州市で約3000人が銀行前で抗議活動を行い、地元警察と衝突。多数の負傷者が出たと香港紙「明報」が伝えたのは11日のこと。

「記事によれば、中国人民銀行(中央銀行)鄭州支店の前に集まった預金者らは、地元政府や警察を批判する横断幕を掲げ、大声で抗議したようですが、駆け付けた地元警察が制圧。連行されたり、ホテルや学校に隔離されたり、中には暴力を受け大量流血した者もいて、一時周辺は騒然となった模様です」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 ネット上には、警察との衝突により顔から血を流す男女や、乗っている車いすをなぎ倒され、地面にたたきつけられる男性の姿も映っており、SNS上には《いくらなんでも、やり過ぎだ!》《なぜ?どうして警察が預金者を暴力で鎮圧する必要があるんだ!》《中央政府は即刻、実態調査すべき!》といった批判的な書き込みが相次いだ。

「河南省では今年4月にも、4銀行で預金が引き出せなくなるトラブルが発生。その原因として預金の不正流用があり、『主犯格』とされる投資会社代表を捜査中であることが判明しました。ところが容疑者は既に海外に逃亡していたようで捜査が難航。預金者数百人が預金返還を求めて銀行に抗議したものの、銀行はそれに応じず、それどころか市当局が預金者の新型コロナ感染対策アプリを不正に操作し、『陽性』『濃厚接触』と表示させて抗議活動ができないように細工をしたことが発覚。それもあり預金者の怒りは爆発、今回の大規模抗議活動に発展したのです」(同)

 報道によると、猛バッシングを受けた河南省の金融監督当局は11日、「預金者の権利を守る」として預金額が5万元(約100万円)以下の場合、15日から立て替えると発表。5万元以上も別途対応するとして沈静化に躍起になっている。

「一部報道によれば、主犯格の男は複数の銀行行員と結託し、農村地域を中心に高金利の預金や金融商品で金を集めては、預金者から入金があると銀行口座に入れたように見せかけて、実はシステムを改ざん。投資会社の別の口座に振り込まれる仕組みで、金を騙し取っていたとされています。ただ、事件が発覚した段階で、男はすでに金を持って国外逃亡した可能性があるとのこと。中国当局が行方を追っていますが、すべてこの男らの犯行だとすると、中国史上最大級の詐欺事件に発展する可能性があります。習近平国家主席が3期目の政権発足をにらむ今年後半には共産党大会も控えていますからね。政府としてはメンツにかけても男を捜し出し、資金回収して国民の批判をかわしたいところでしょう」(同)

 さて、事件の顛末はいかに。

(灯倫太郎)

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