桐谷さんも大喜び!?「株主優待」復活の兆し「東証区分変更」で

 このところ、自社商品や商品券、お食事券などを提供する「株主優待」を新設する企業が増えているという。

「株主優待情報を発信している大和インベスターズ・リレーションによると、昨年10月から今年6月いっぱいまでに優待を新設した企業は56社で、昨年同時期の42社を上回っているとのことです。新設する企業数は17年10月〜18年9月までの106以来、3年連続で減少していましたが、復活の兆しが見て取れるということでしょうか」(経済ジャーナリスト)

 もしこのままの調子で新設傾向が維持されるようであれば、桐谷広人さんを始めとする全国の株主優待ファンにとっては、久しぶりの朗報ということだろう。

 このところ株主優待ファンにとっては逆風が吹いていた。株主優待は配当とは違って「株主平等の原則」にそぐわないとして、廃止傾向にあったからだ。例えば配当なら1000株の株主は100株の株主に対して10倍の配当を得られるといった、持ち株の比率に応じた利益を得られる。ところが株主優待の場合だと、「100株以上で〇〇、1000株以上で□□」といったように、持ち株の比率に応じた利益が得られるわけではない。そして少数株主には有利で、「〇〇株以上」と上限が限られてしまう大口投資家にとってメリットは少なくなる。

 だが今年4月に、プライム、スタンダード、グロースと市場が3分された東証再編を境に潮目が変わったという。

「上位のプライムやスタンダードはコーポレートガバナンス遵守の基準が厳しいため、この株主平等の原理に合わない株主優待は廃止の傾向にありました。一方、ガバナンス遵守の基準は多少緩いけれども、東証再編で『株式の流動性』が上場基準で厳しくなったことから、グロースの企業はより多くの個人投資家にも自社株を買ってもらうために優待を新設する傾向に転じたのです」(同)

 株主優待は自社の製品やサービス購入で使える金券などがもらえることが多いので、個人のファンが付きやすく、なおかつ自社のことを知ってもらう機会にもなるからだ。

 新設以外でも5月、商船三井がこれまでの「にっぽん丸クルーズ」の利用券の優待に加えて、「さんふらわあ」などのフェリーの利用券を追加したり、東急が優待を得るために必要な保有株式数を減らすなど、より多くの人に長期で株を持ってもらうための拡充も行われている。

 これら優待の新設や拡充は、個人投資家にとっては投資判断の幅が広がるという意味でやはり歓迎だろう。

(猫間滋)

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