一時はセ界の借金を全て肩代わりして最下位をひた走っていた阪神だが、気付けばAクラス争いまで復調。その一方で永遠のライバル・巨人は、交流戦前にわずか1だった首位ヤクルトとのゲーム差が7に広がる大失速。明暗がくっきり分かれたようにも見えるが、コトはそう単純な話ではなかった!
阪神の歴史的な連敗でスタートした今季のセ・リーグ。開幕9連敗はリーグワースト記録を43年ぶりに更新。借金は最大16にまで膨れ上がり、セでは初の「シーズン100敗」すらチラつくほど負け続けた。在阪テレビ局の阪神担当記者がその理由を分析する。
「開幕投手予定の青柳晃洋(28)がコロナ感染で合流が遅れ、守護神に指名した新外国人・ケラー(29)がまったくの期待外れだったり。誤算が多々ありましたが、結局、選手や監督、コーチの油断や慢心が最大の原因。ヤクルトに最大7点差から逆転負けした開幕戦が象徴的ですが、序盤の大量得点で安心しきって、反撃に出られた6、7回、失点時の阪神ベンチが中継されたら、みんなニヤニヤ笑っていた。あれじゃ勝てる試合も勝てません」
ただ最下位に甘んじていたチームも、交流戦を12勝6敗で乗り切り4位浮上。9ゲーム差だった3位広島に2差まで詰め寄った。借金返上とまではいかずとも、上位陣に肉薄している。阪神担当記者が言う。
「連敗中の矢野燿大監督(53)は痛々しくて見ていられませんでした。昨季までの喜怒哀楽を前面に出す態度は鳴りを潜め、ずっとお通夜のような暗い表情。無理していただけで、もともとは内向的な性格ですから。そんな監督に引きずられてチームの雰囲気が沈まなかったのは、『影のMVP』がいたからなんです」
実は井上一樹ヘッドコーチ(50)が、盛り上げ役を買って出ていたという。別のトラ番記者もこれに同意。打撃理論や戦術面ではなく、モチベーターとしての有能さに言及する。
「100敗説がささやかれたら『誰もやったことないなら、うちがやればいいじゃないか』と笑い飛ばし、ある試合にメジャーのスカウトが視察に来たと知れば、佐藤輝明(23)や大山悠輔(27)に『どうもお前を見に来たらしいぞ』と個別に耳打ちする。挙句に成績が低迷する糸原健斗(29)の名を挙げて『どうも糸原を他球団が』と話し、それを聞いた選手も記者も『そんなわけないやん』とドッと笑う、そんな感じでした。負けが込んでも選手が腐らずここまで巻き返せたのは、井上ヘッドがいたからです」
真夏の「死のロード」、そして後半戦に向けては、近本光司(27)の復調でクリーンアップが固定。復帰して12球団トップの防御率1.17(6月21日現在)を誇る青柳に、岩崎優(31)、アルカンタラ(29)、湯浅京己(22)らリリーフ陣も充実して、明るい材料も多い。さらに球団関係者が言う。
「親会社である阪急阪神ホールディングスの株主総会が、交流戦後の6月15日に開かれました。毎年毎年、阪神の成績や運営に株主から厳しい意見が飛びますが、『弱い年』は特に糾弾が凄い。今季は矢野監督がシーズン前から今年で辞めることを明かしていたので、仮に最下位ならどんな騒ぎになったことか‥‥」
どうにか4位で総会を迎え、球団も監督もホッと一安心なのだとか。
*巨人VS阪神「だめほー」なベンチ裏レポート(2)につづく