交流戦はヤクルトが優勝、2位が阪神と史上初のセ・リーグによるワンツーで決着した。全体の勝敗も55勝53敗でセが2年連続で勝ち越した。以前はパ・リーグが交流戦でも圧倒したが、両リーグの力の差はなくなってきた気がする。特に今年は阪神・大山、ヤクルト・村上、巨人・岡本、DeNA・牧ら、セの若い主力打者の活躍が目立った。投手では阪神・青柳が3戦全勝、防御率0.00の完璧な投球を見せた。それに比べて、パの選手は投打に影が薄かった。
全チームに勝ち越したヤクルトの勝因は、と問われたら、高津監督が「リリーフみんながMVP」と語っていた通り。
でも、僕はリリーフ陣の力が出せる環境を整えた高津監督の采配こそ、MVPやと思う。球団が交流戦後に早々と新たな2年契約を発表したのもうなずける。ほんま素晴らしい監督になった。昨季も投手陣をやりくりして日本一に輝き、今年は延長12回制になったことで、さらにその手腕が際立っている。自分も現役時代にリリーフ投手やったから、連投を少なくするなど、どうしたらバテずに回せるかをよくわかっている。
田口なんかは左のリリーフエースとして、巨人時代とは見違えるようや。交流戦終了までで21試合に投げ、防御率0.00は立派の一言。抑えのマクガフ、清水、今野ら、安定感が抜群で駒もそろっている。早い段階で先発投手が降板しても、中継ぎ陣が踏ん張って追加点を与えないから逆転勝ちが多い。打線も村上、山田、塩見と力のある選手が多いので、誰かが不調でもカバーできる。
交流戦が終わった段階で2位の巨人に7ゲーム差。この差は簡単には縮まらない。2年連続で優勝する可能性はかなり高くなった。ペナントレースでむしろ注目したいのが2位争い。
現在2位の巨人は投打に今ひとつピリッとしない。3位の広島は交流戦5勝13敗とパ・リーグ相手につぶされてしまって、ここから立て直しは難しい。一番勢いがあるのはダントツ最下位から4位に上がってきた阪神。開幕23試合で最大16の借金を背負ったけど、6にまで減らした。投手力はヤクルト以上の安定感があるから、巨人との5.5ゲーム差は射程距離に入っている。
何と言っても大山が目を覚ましたのが大きい。7本塁打、21打点は交流戦の2冠となった。どっしりと構えて、自分の間でスイングできるようになっている。開幕直後はストレートに差し込まれる傾向があったけど、今は速い球に力負けしなくなった。レフト方向への大きなファウルなんか、5月中旬までは見られなかった。ストライクゾーンでどんどん勝負してくるパ・リーグの配球と相性がよかったのもあるかもしれないが、打席で自信に満ちあふれている。
問題は弱点を熟知されているセ・リーグ相手に今の感じで打席に立てるかどうか。調子をキープできれば、前を打つ4番・佐藤輝のプレッシャーは軽減され、相手のマークも緩くなる。チーム防御率2.65が示すように3点取れば勝てるんやから、阪神の浮上は大山のバットにかかっている。
5位のDeNAはエースの今永が戻ってから戦いが安定してきた。牧を中心とした打線は得点力が高く、リリーフ陣も力がある。もろさはあるけどおもしろい存在。Aクラス争いに絡んできてもおかしくない。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。