値上げも待ったなしだ。経済部記者が説明する。
「6月以降も食品は続々値上げとなる見込みです。大手スーパーのイオンは昨年9月に『価格凍結』を宣言し、プライベートブランドの『トップバリュ』の食料品など5000品目を価格据え置きにした。今年3月末までの予定を延長したが、それも6月末までとなっている」
実に食料の6割強を輸入に頼る日本の台所事情だけに、コトは深刻なのだ。
「問題は今が最悪の時ではないということです。小麦の価格はこの4月に17.3%値上がりしました。しかし、この価格は昨年9月から2月までの売り渡し価格の平均で、2月24日からのウクライナ侵攻がほとんど反映されていないのです。つまり10月の価格にはウクライナ情勢が加味されることになります。値段がどんどん上がればお客さんも減る。経営が破綻して閉店する店も出てくるかもしれない」(経済評論家・荻原博子氏)
高騰した小麦が市場に出回るのは来年初旬から。いつもの街中華の店が突如ラーメン1杯2000円の高級店に看板替えしたら、もはや暖簾はくぐれまい。
「日本ではマクドナルドのビッグマックセットが690円ですが、ニューヨークでは1500円程度、ラーメンだって1杯1500円は下らない。食費の節約で外食離れが進むと多くの店が潰れ、競争相手が減れば値段は上がる。そうなれば普通の人は外食もできなくなる。本来ファストフードは多くの人に安く楽しんでもらう店だったのが、一部のお金持ちが行く店になっていく。回転すしでは高い皿に手をつけられず、ファミレスも月1回の家族サービスぐらいでしか行けない店になってしまうかも」(経済評論家・佐藤治彦氏)
コロナ禍には持ち帰りなどで辛うじて生き延びた外食産業でも連鎖倒産の危機が待ち受けているのだ。
「スターバックスコーヒーは4月に一気に55円値上げしましたが、セブン.イレブンも7月からの値上げを発表し、他のコーヒーチェーン店も追随せざるを得ない状況です。今後円安が140円、150円と進めば、コーヒー豆の価格はさらに上昇。備蓄の少ない個人店では1杯1000円の高値になることも想定されています」(経済部記者)
もはや、食後のイッパイも高嶺の花となるのか。
「8〜9%の急激なインフレの進むアメリカでは中央銀行が高金利政策でお金の流通を減らす対策に乗り出している。一方、日本は相変わらずゼロ金利政策で、お札をじゃぶじゃぶ刷って回していれば富は増えるという無策のまま。ガソリン価格の高騰に関しても、国民民主党がガソリン税を軽減する『トリガー条項』の発動を訴えたものの、その提案を退けてしまった。これはいったん外せば税金が徴収できなくなると財務省の猛反発を食らったから。〝財務省の犬〟と揶揄される岸田政権には、大型の公共投資など思い切った景気対策がひとつもないのです」(デスク)
昨年秋、「所得倍増」の勇ましいキャッチフレーズで総理のイスに座ったが、1年足らずで岸田ビジョンはカスんでしまった。
*悪い「岸田インフレ」を乗り切る生活防衛術を専門家が指南(3)につづく