派閥の裏金問題により、安倍派、二階派、岸田派、茂木派、森山派と次々と派閥が解散し、今は麻生派のみが残る自民党。そのため、今回の自民党総裁選は、従来の「派閥総裁選」から「派閥なき総裁選」とも言われている。
だが、実態は依然として派閥の色が色濃く残されていることが明らかになってきている。政治ジャーナリストの田崎史郎氏も、9月13日の「ひるおび」(TBS系)に出演すると、「かつてのような派閥の命令一下で動く、というのはないが、人脈は生きている」と、「隠れ派閥総裁選」との見方を示した。政治アナリストもこう指摘する。
「各候補の推薦人を見ると旧派閥単位で動いているのがよくわかる。岸田文雄首相が自ら解散した岸田派からも岸田派当時のナンバー2で番頭役の林官房長官が出馬した。その推薦人を見ると20人中15人が旧岸田派だ。安倍チルドレンと言われ、前回総裁選で安倍晋三元首相が全力で担いだ高市早苗経済安保相の推薦人は旧安倍派が13人。河野太郎氏は、なんと麻生派の議員が推薦人のほとんどだった」
では、今のところ他の候補より一歩リードか、とも言われている小泉進次郎元環境相はどうか。
「小泉氏は無派閥であるものの、実態は菅義偉元首相の全面支援を受けて戦っています。菅氏も無派閥ですが、『ガネーシャの会』や『偉駄天の会』など、複数の勉強会を持っていました。そして、それらは『菅グループ』と称され、その数は50人とも60人とも言われており、今回も、その菅グループが進次郎氏支援でフル回転しています。小泉氏は無派閥といいますが、実態は派閥そのものとも言える菅グループが動いているのです」(テレビ局政治部記者)
告示日の12日、「報道ステーション」(テレビ朝日系)には、立候補者9人が生出演した。その際、MCの大越健介キャスターが派閥問題に触れ、小泉氏に、「菅さんという実力者が後ろで支援している。ある意味、派閥のようになっているということはないか」と問うと、小泉氏は、「菅さんだろうと誰だろうと、応援してくれたら一番ありがたい。誰でも応援してほしい」と答え、真正面からの回答を避けた。前出・アナリストが言う。
「9人の候補者の争いだが、最後は2人だけの決戦投票となる可能性が高い。その1人に小泉氏が残る可能性は強い。そうなった時、実質派閥と言われる菅グループがなりふり構わず議員獲得に動くだろう」
「派閥解消」と言いながら、結局は「小泉勉強会」「菅勉強会」のような体裁を変えた「隠れ派閥」が暗躍し始めた、とも言えそうだ。
(田村建光)