悪い「岸田インフレ」を乗り切る生活防衛術を専門家が指南(1)黒田発言で円安が一気に加速

 じっと息を潜めて、コロナ禍をやり過ごしたかと思えば、今度は急激な物価高の襲来。おまけに1ドル135円の超円安まで引き連れてくるとはもはや盗人に追い銭同然。政府の無為無策が引き起こした〝岸田インフレ〟で家計が火の車、いや火だるまになる前に、経済専門家が火事場の特効薬を処方する。

 値上げラッシュが止まらない。帝国データバンクの調査によれば、22年以降の食品主要メーカーの価格改定計画で5月末までに1万789品目の値上がりが確認された。特に目立ったのが3609目の加工食品で、これは食用油、小麦粉、大豆、砂糖など原材料の高騰によるものだった。

 この物価高に関し、岸田文雄首相(64)は13日の参議院予算委員会で、

「欧米では7〜8%台のインフレに直面する中、国内では4月の物価指数は2.5%の上昇にとどまっている」

 と説明した上で、自慢の「聞く耳」も使うことなく、消費税減税など野党の提案を一蹴したのだ。

 こうした政府の景気対策への不作為に憤るのは経済評論家の佐藤治彦氏だ。

「物価高にも2種類ある。給料が上がり物価が上がるのがいい物価高なら、今の日本は、給料はこの20年間一向に上がらないどころか、実質賃金は下がる一方。最低賃金も韓国以下になってしまっている、完全に悪い物価高になっています。しかも、冷凍食品など食料品、電気料金など光熱費やガソリン代など日常生活での必需品ばかりが値上がりしている。高級品とは違い、買い控えすることができないために家計を直撃しているのです」

 明日のパン、いや今日の晩メシの値段に庶民は腐心しているのに、挙句は、日銀・黒田東彦総裁(77)の「値上げの許容度が高まっている」とズレまくり発言まで飛び出したのだ。

 経済評論家の荻原博子氏も呆れ顔で語る。

「どこのスーパーに行っても値段が上がっているので高くても仕方なく買うだけ。それを許容って、まったく意味がわからない。庶民の生活がまったくわからない人にそういうこと言ってほしくないですね」

 家計の苦境を軽視する、この発言に批判が殺到。黒田総裁は国会で「適切な発言ではなかった」と陳謝するまでに追い込まれた。

「アベノミクスの置き土産ともいうべき黒田総裁は、物価2%上昇を目標にゼロ金利と言われる異次元の金融緩和政策を進めてきたが、その効果は皆無。ところが、この異常気象、コロナ、ウクライナ戦争の影響で物価だけが上昇してしまった。自分が9年間続けてきたことを否定することになるだけに『物価高だから金融緩和を考える』と言えなかったとしても、わざわざ『金融政策を変えるつもりがない』と発言したことで、円安が一気に加速してしまった」(佐藤氏)

 円安が5円進めば、すべての輸入品の価格が2〜3%上がることを日銀総裁が知らないはずもないのだが‥‥。政治部デスクが説明する。

「黒田総裁は『円安は日本経済にプラス』と発言してきた。もしや2%が頭の中でごっちゃになっているのでは。政府は5兆円への増額を目指す防衛費の財源をどこにするか大騒ぎしている。毎年30兆円の国債を発行しているが、ここで金利を1%上げると、単純計算で3000億円の負担増になります。日銀は金融緩和をやめることができないのです」

 21世紀最悪レベルの円安でも黒田総裁の任期は来年3月まで続く。

*悪い「岸田インフレ」を乗り切る生活防衛術を専門家が指南(2)につづく

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