6月5日、福島県郡山市内で開かれた会合の中で、岸田文雄首相が「外国から観光客が来れば円安は追い風になる」と発言したことに対して、ネット上では反発の声が相次いでいる。
新型コロナウイルスの水際対策による入国制限が1日から大幅に緩和され、10日からは外国人観光客の受け入れも再開。韓国ではすでに日本のパッケージツアーが爆売れ状態で、約2000人が日本行きを決めたと現地メディアで報じられるほどだ。そんなインバウンド需要の復活が期待される中で、岸田首相は「(インバウンドは)地方を元気にする大きな可能性を持っている」とし、円安も外国人観光客を日本に呼ぶ後押しとして「追い風になる」と述べたのだ。
しかし、これにネット上では《円安が物価高も引き起こし、多くの日本人が苦しんでいるのに“円安が追い風”発言はいかがなものか》《インバウンド需要に期待して痛い目を見たばかりなのに。円安対策もしないでまた目の前のインバウンドに飛びつくとかありえない》など厳しい意見が相次いでおり、《外国人観光客を受け入れることで本当に円安が追い風になるか?》といった疑問の声も見られる。
「今の円安が追い風になるかどうかは微妙なところかもしれません。コロナ禍前の2019年の訪日外国人はおよそ3188万人ですが、そのうちの1/3にあたる959万人が中国人観光客ですからね。中国では現在もコロナによる厳しい規制が続き、いまだ海外旅行は規制されている状況。インバウンド消費額圧倒的1位で日本で爆買いしてくれるお得意様不在では、円安でもそこまでインバウンド消費は期待できないでしょう。また、円安によって安価に楽しめる観光地をアピールしてしまえば、観光客の質が下がることも懸念されます。日本で観光する際にはマスクの着用やアルコール消毒などを求められることも多いと思いますが、それを守らずトラブルになるケースも考えられ、トラブル増による日本のブランドイメージが低下する可能性もあるでしょう」(経済ジャーナリスト)
首相には円安を喜ぶのではなく、円高でも外国人観光客が押し寄せるような魅力的な国づくりをしてもらいたいところだ。
(小林洋三)