世界情勢の緊迫化や歴史的な円安を受けて、物価は高騰するばかり。いくら食費を切り詰めても、この暑さでは電気代がバンバン加算され‥‥。インフレを乗り切るために、住居費を見直す動きが高まっている。
「2年前と比べると、相談件数、契約件数ともに2倍となっており、格安物件のニーズの高まりを実感しております」
こう話すのは1都3県で賃料6万円以下の物件を専門に扱う「部屋まる。」日暮里店の河栗大介店長。2年前といえば、実質賃金がマイナスに転じた時期だ。「櫻井幸雄の人生スマイル相談室」(法研)などの著書がある住宅評論家・櫻井幸雄氏の説明によると、
「賃貸を扱う不動産屋さんは、『おどし』『ためし』『おとし』の3段階で物件を見せると言われています。お客さんの要望をある程度聞いて、最初に劣悪な物件を見せるのがおどし。『こんなにひどい部屋しかないのか』と思わせておいて、次にあまりよくないためしの物件を挟んで、3番目におとしの〝本命〟を提案するんです。しかし昨今は家賃が上がってきたこともあって、おとしに行きつく前に『これ以上は望めない』とあきらめて物件を決めてしまう人が増えているそうです」
続けて、櫻井氏が物件探しの心得を説くには、
「安い物件を探す前に、きっちりと相場をおさえておくことが大切です。例えば東京23区内で3万円台で借りられる物件はトイレや洗面所が共同。部屋にトイレがある物件は4万円台。これにシャワールームなど体を洗う設備を希望するなら5万円台は覚悟しなければいけません。逆に日当たりもよく、トイレやお風呂がついて、3万円台の物件があれば、『何かがある』と疑ってかかるべきでしょう」
そんな中、これまでの常識を打ち破る新機軸の物件が若者を中心に人気を集めている。それが「狭小物件」だ。安アパートといえば真っ先に4畳半を思い浮かべるが、
「今や居室3畳という物件は珍しくありません。都心部でなるべく安く、しかも築浅の物件に住めるのはもちろん、居室が狭いのでエアコンの効きがよく、電気代も節約できます。他にも『掃除が楽』『立たなくても欲しいものに手が届く』といった声も聞かれますし、実際に住んだ方の7割以上に満足していただいております。特に人気があるのは、居室にシャワー、トイレがついた6万円台の部屋。築年数や立地にこだわらなければ3万円台の部屋もあります」(河栗店長)
実際に都内の狭小物件をネットで検索すると、コンパクトに設計されたオシャレな物件がいくつもヒットした。必要最低限の物しか持たない若者の「ミニマリスト」にはうってつけの物件と言えよう。一方、生前整理とばかりにテレビや本棚、冷蔵庫を売り払い、住めば都の「極狭物件」に引っ越すのもアリかもしれない。
「狭小物件にはロフトつきの物件が少なくありません。ロフトと聞くと、ハシゴで昇るイメージが頭に浮かぶかもしれませんが、最近は手すりと階段がついたタイプも増えています。中高年の方でも安心して昇り降りができるので、『ロフト=若者』という固定観念を捨てて、選択肢を広げるのもいいと思います」(河栗店長)
年金生活者にも強い味方だ。
(つづく)