いよいよ、NATOによるロシアへの締め付けが効いているようだ。
友好国・セルビアへの訪問を予定していたロシアのラブロフ外相が、近隣諸国による飛行制限のため外遊を断念、会談中止を余儀なくされたことが明らかになった。
「同外相は6日にセルビアを訪問し、ブチッチ大統領らと会談する予定でしたが、NATOに加盟する周辺国のブルガリア、北マケドニア、モンテネグロの3カ国が、領空内の飛行を禁止。ロシア側は『前代未聞の決定』として激しく反発しています」(軍事ジャーナリスト)
さらに、ウクライナ東部での軍事侵攻が続く中、連日伝えられるのが、ロシア軍内部で起こっているという脱兵や分裂といった内紛を伝えるニュースだ。
ウクライナ保安庁が公開したロシア兵の会話とみられる音声には「皆、前線に行くことを拒んでいた。600人いた部隊が215人しかいなくなった」「隊長が銃を振り回し、乱射し始めて、『前線に行かなければ撃ち殺す』と言った。すると誰かが『撃ち殺してみろ』と手りゅう弾のピンを外しながら言った。『撃ち殺してもいいぜ』『ここで一緒に自爆しようじゃないか』と。とにかく全員で銃撃戦になりそうだった」という生々しいやり取りが記録され、これが事実なら、前線では相当深刻な士気低下が起こっていることが想像できる。
「政府は志願兵の年齢制限を撤廃するなどして兵力集めに躍起ですが、戦争の長期化でここ数カ月、沈黙していたメディア関係者をはじめ、起業家、地方議員、さらには退役軍人などがいっせいに声を上げ始め、ロシア国内では反戦・厭戦ムードが広がりつつあります。これまでプーチン万歳を叫んでいた人々による『プーチン離れ』が急加速しているのです」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
プーチン氏としては、本来なら5月9日の対独戦勝記念日でそうした反戦ムードを払拭したかったはず。だが結局、同氏の口から力強いメッセージが発せられなかったことで、求心力が揺らいだ可能性がある。
「現在、ロシア軍はウクライナ東部に攻め込んでいるとはいえ、西側から武器弾薬が次々に補充されるウクライナ軍と違い、自国の軍隊、装備が日々失われる中、プーチン氏自身もこれ以上の戦争遂行が難しいと肌で感じているのは間違いないでしょう。そうなれば、仲裁に積極的なトルコのエルドアン大統領を仲介者として、ゼレンスキー大統領との首脳会談が実現する可能性はゼロではない。8日には、ラブロフ外相がトルコを訪問する予定ですから、ことによると12日の『ロシアの日』直前に首脳会談実現というウルトラCが飛び出すことも考えられます。希望的観測ではありますが、いずれにせよ8日に行われるラブロフ外相とエルドアン大統領との会談がカギになると思いますね」(同)
世界中が電撃会談、そして、その先にある「一時的停戦」を望んでいる。
(灯倫太郎)