プーチンが怯える「反ロシア義勇軍」の正体【3】オリガルヒの不審死と裏切り

 ロシアにとって最大の脅威が、NATO加盟国の軍事的バックアップだろう。軍事ジャーナリストの井上和彦氏が解説する。

「最も恐れているのは、ウクライナに提供される高度な軍事情報でしょう。『モスクワ』にしてもその正確な位置がウクライナ軍に伝えられ、それに基づき攻撃が成功しています。他にも、ロシア軍では将軍級の軍人が何人も死んでいますが、これはどこに誰がいるのか、そういう情報がいっさいがっさい漏れているということ。情報戦でロシアは完全に後手に回っているんです」

 ロシア軍には戦車約1000両、航空機は200機、ヘリコプター150機もの甚大な被害が出ている。その背景には、西側諸国が提供する的確な情報に加え、「最適解」の兵器があった。

「地上戦には敵車両を自動追尾する対戦車ミサイルの米国製『ジャベリン』や英国製『NLAW』が大量導入されました。GPSを搭載し30〜40キロ先の目標を精密砲撃する150ミリ榴弾砲も戦果を挙げています。空には携行式の地対空ミサイル『スティンガー』、あるいは一部の巡航ミサイルや弾道ミサイルも迎撃できる『S300』など。これらが尽きることなくウクライナに届けられています」(井上氏)

 西側諸国から経済制裁を受けるロシアは、軍需物資の調達もままならず、現場の兵士たちは、食糧や武器弾薬がいつ切れるかわからない恐怖と戦っている。

 経済面で支えとなるはずだったのが、ロシアの主要産業で時の政府と連携して大きくなった「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥群だ。しかし彼らの扱いにもプーチン大統領は手を焼いているのが現状なのだ。

「目端の利く一部のオリガルヒ関係者には、国外脱出している者も少なくありませんが、プーチン大統領が戦争後の国内の経済復興を目論むなら、彼らの協力は不可欠です。どうやって手綱を握るか、それは『KGBの流儀』に則った暗殺です」(山田氏)

 旧ソ連時代に暗躍した秘密警察「KGB」は、敵や裏切り者は容赦なく排除してきた。そして侵攻開始後、10人近いオリガルヒやその関係者が不審死を遂げている。山田氏が言う。

「24時間以内に不可解な無理心中が2組あった、という例も。ロシア政府やプーチン大統領の関与は確定していませんが、他のオリガルヒにとっては『謎の死を遂げる』という事実だけで、十分裏切りの抑止力になる。彼らが政府にとって重要な情報を持っていることもそうですが、仮に国内の反対勢力に資金提供などをされてもたまりませんからね」

 それでも、頼みの金ヅルを失いつつあるようだ。

*プーチンが怯える「反ロシア義勇軍」の正体【4】につづく

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