テリー みんなが羨む理想的なセカンドキャリアですよね。
井上 お世話になってた「スッキリ」(日本テレビ系)に挨拶に行ったら、加藤(浩次)君も「羨ましい」って言ってくれました。
テリー 加藤さんもいつまでも芸能界にいるタイプじゃないから。
井上 しがみつくタイプではないですよね。
テリー 結局、井上さんは芸能リポーターを何年やったんですか。
井上 36年です。
テリー その間に芸能リポーターの仕事も変わりましたよね。
井上 昔はある意味、逃げる芸能人をマイクを持って追いかけるみたいなことが存在意義でしたからね。でも最近は、週刊誌のスクープを後追いしたり、芸能評論家でもないのにそういう記事について解説したりするのがおもな仕事になってきてますね。
テリー それはいつぐらいから?
井上 やっぱり個人情報保護法ができて以降ですよね。僕らが業界に入った頃は、スタッフルームに芸能人の住所録があって、何か騒動を起こしたり、恋愛沙汰になったタレントさんがいたら、「ここが自宅だから行って来い」って言われてました。だから、芸能人の家に行くことにはあまりためらいもなかったし、その頃は「行け」と言われたら、行くしかないという感覚だったんですよ。
テリー そりゃそうだよね。
井上 もっと言えば、2005年までは高額納税者が発表されてましたから、年収1000万円以上の芸能人は本名と自宅の住所が台帳に載っていて、税務署に行けば誰でも閲覧できましたし、「明星」や「平凡」の付録にも有名人の住所録が付いていましたからね。
テリー おおらかな時代ですよね。
井上 でも、ここ数年はスクープを取ったところで「わぁ、すごい」って空気でもありませんし、芸能リポーターの存在意義って何なんだろうと思うことが増えました。それともう1点は、テレビ局にお金がなくなりましたね。
テリー ほんとにないよね。
井上 スクープって必ず取れるものじゃないから基本的にお金がかかるんですよ。僕、大竹しのぶさんの家に連続13日間張り込んだことがあるんですけど、つまり12日間は空振りなんです。
テリー それは何で張り込んでたの?
井上 明石家さんまさんと離婚された後でしたけど、野田秀樹さんと付き合ってるという情報があったんです。
テリー あぁ、あったなぁ。でも、そういう話題も最近はテレビが扱わないよね。例えば市川海老蔵さんの件とかも全然やらないじゃないですか。
井上 やったところも数カ所ありますけど、あんまりやらないですね。特に全国ネットは。
テリー ねぇ。
井上 それは良く言えば危機管理なんでしょうけど、トラブルになりそうなことは避けたいというのが本音ですよね。どっちに付いたにせよ、それを報道することが局や番組のプラスにならない、だからあえて放送しない、と考える傾向が強くなっているんだと思います。
テリー なるほどね。
井上 僕自身も若い頃はスキャンダルと聞いたらワクワクしてましたけど、今はそんなことを深掘りして意味があるのかなと。リアルに戦争が起きてる時代に、ひとつの家庭内の問題とか、もちろんそれも当事者にとっては大変な問題なんだと思うんですけど‥‥。
*テリー伊藤対談【3】につづく