プーチン「核兵器ドミノ」が東京を襲う【4】北海道住民が擬似戦争体験

 現に、井上氏は「我々が考える以上に、ロシアは日本を警戒している」と見ている。

「日本は本質的に戦争では何もできない。が、ロシア側は『何もしないわけはない』と考えています。象徴的なのが、3月末から国後・択捉両島で行われた1000人規模の軍事演習です。北海道沿岸の街からは、爆破の際のオレンジ色の光で空が染まるのが見え、家屋の窓は衝撃波で振動したそうです。住民は擬似的に戦争を体感させられた。敵国にプレッシャーをかけていることにほかなりません」

 具体的に、日本にとって最も脅威となるのは、前述の「キンジャール」だろう。その射程距離は2000〜3000キロとされている。東京からウラジオストクまでの距離は約1000キロ、ハバロフスクまでは約1500キロしかない。つまり、自衛隊が守る日本の領空を侵犯せずに、発射が可能なのだ。そこまで近寄らずとも、2000キロ遠方から放たれた秒速3.4キロで飛翔するマッハ10のミサイルが東京に到達するまでの時間はわずか588秒。つまり、10分足らずで着弾することになる。

「イージス艦など日本のミサイル防衛システムは、北朝鮮のノドンのような中距離ミサイルの迎撃は可能ですが、キンジャールは速すぎる。撃たれたら終わり、現状では対処のしようがありません」(井上氏)

 キンジャールに搭載可能な核弾頭は、50キロトンまで。繰り返すが、広島に投下された原爆が約15キロトンの威力であった。ロシア国内からの核ミサイルで、東京は10分で焦土と化すのである。

「しかし、核兵器使用が秒読み段階になっているわけではありません。ウクライナ侵攻でもそうでしたが、ロシアは何かを実行する直前には必ず、自国民へのプロパガンダの意味も込めて、その行為の正当性をアピールする。核兵器を使う時も正当性を何らかの形で事前に主張するはずです。今は明言せず含みを持たせた発言ばかりで、すぐそこに迫った脅威ではない。ただし、核のボタンを押すタイミングは、完全にプーチン大統領に委ねられている。それが何より不気味です」(黒井氏)

 いざ核の脅威が迫った時、我々は「まな板の上の鯉」だというのか─。

*「週刊アサヒ芸能」5月19日号より

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