今年の4月4日から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編された東京証券取引市場。従来の「東証1部」より上場基準を厳しくして銘柄を厳選。その際の目玉の1つが、メルカリのグロースからプライムへの“2段跳び”申請と言われたものだったが、現在はグロース市場でも伸び悩む格好となっている。
「4月28日にメルカリは21年7月〜22年3月期決算を公表したのですが、連結純損益は前年が35億円の黒字だったところが今年は77億円の赤字でした。売り上げは770億円だったものを1100億円と伸ばしているので、売れば売るほど損をしている体質に陥りこんでいることが浮き彫りになりました」(経済部記者)
これを反映して、株価は目も当てられない。昨年11月に7390円だったのを天井にしてその後は右肩下がり。以来、最安値の2146円を記録して、現在まさにこの水準にある。この5カ月ほどで7割も安くなったことになる。
その中で注目されているのが「不正利用」対策費だ。1〜3月の第3四半期では16億円が「補填金」として計上されている。具体的にはどんなことなのだろうか。
「不正利用の大きな中身は2つで、メルカリでのクレジットカードの不正利用とメルペイでのフィッシィング詐欺です。その対策として多くのユーザーに対し利用制限をかけましたが、不正利用とは無関係のユーザーにまで影響することになり、結果、メルカリを通じた取引の総量の数%が消失。その損失やセキュリティ対策と合わせて合計で16億円がかかったというわけです」(同)
クレジットカードの情報が他人に漏れたがために、メルカリで勝手に買い物をされてしまったという被害と、怪しいメールが来たので開いてしまうなどした結果、偽サイトなどを通じて要求された金銭を払ってしまったといったような、よくある詐欺の被害。その舞台としてメルカリが広く利用されているということが、対策費の金額の大きさから分かる。加えて対策費は第4四半期でも重くのしかかるという。
もともとメルカリが18年6月に東証マザーズに上場した際、同社の急成長を支えるネット社会の“負の側面”について指摘されていた。
「同社のウリはスマホに特化するという“便利さ”と取引は個人間の合意で成り立つという“マッチング”性にありました。カードの不正利用とフィッシング詐欺はまさに、この2つの利点が詐欺師に付け込まれた形。またこの2つ以外にも転売ヤーの暗躍や盗品やガラクタを疑われる品物の出品などで、法令順守の取り締まりはなかなか難しいでしょう」(経済ジャーナリスト)
つい最近も、電磁波対策を名目として単なるワッシャーが出品されていたり、女子高生の使用済みマスクの出品などが報告されたばかり。中には出品者と購入者が示し合わせた形でダミーの商品を出品したりと、規制の網が及ばないこともあるとか。騙す・騙されるのイタチごっこは尽きることはないが、そのための便利なツールとして利用されたとすれば、同社もたまったものではない。
(猫間滋)