日本一有名な「駅ホームの宿」は、函館本線廃止後も存続可能?

 今年3月、北海道新幹線が札幌に延伸する2030年までの廃止が決定した函館本線の長万部〜小樽。そのほぼ中間に位置する比羅夫駅(倶知安町)はニセコの山を一望できる小さな無人駅。ここは駅舎が全国でも大変珍しい「駅の宿ひらふ」という民宿になっており、鉄道ファンや旅行好きの間では大変有名だ。

 テレビや雑誌などでもたびたび紹介されていただけに、今回の廃止決定にショックを受けている人も少なくない。とはいえ、通称“山線”と呼ばれるこの区間は余市〜小樽間を除くと乗客数が極端に少なく、比羅夫駅も例外ではない。列車は上下線とも1日各7本(※22年4月時点)で、車両もわずか1〜2両と完全なローカル線仕様となっている。

 秘境駅らしい風情はあるが、廃止になれば宿も当然閉鎖になるはず。多くの人がそう思っているようだが、必ずしもそうなるとは限らない。廃止後、駅舎を取り壊す場合も多いが、なかには譲渡してバスの待合所や地域の施設などに活用されるケースもあるからだ。

「気になって宿のご主人に尋ねると、『廃止になった後も譲渡という形で続けていけたらと思います』と語っていました。もちろん、現時点では確定というわけじゃないようですが、存続に前向きなコメントが聞けてホッとしました』(先日宿泊した鉄道ファン)

 なお、譲渡ではないが95年9月に深名線の廃線に伴い廃止となった天塩弥生駅(北海道名寄市)は駅舎が解体されて一度更地になったが、後にある夫婦が駅やその周辺の土地を購入。昔の駅舎風の建物を新たに建てて、16年から駅と同名の屋号で相部屋スタイルの民宿兼食堂を営業しており、旅行者に人気だ。

「比羅夫駅にはバスが乗り入れておらず、国道沿いにある一番近い停留所までは約2キロ。つまり、駅はかなり奥まった場所にあり、ニセコのスキー場からも遠いので再開発の可能性も低い。宿側が希望しているのであれば、JR側も譲渡に応じる可能性は高いのでは」(鉄道ジャーナリスト)

 とはいえ、路線廃止までにはまだ時間もある。機会があれば、鉄道が走っているうちに駅の宿に泊まってみるのもいいかもしれない。

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