本州と北海道を結ぶ人と物流の大動脈となっている青函トンネル。JR分割民営化を翌月に控えた88年3月に開通した総延長53.85㎞の当時世界最長のトンネルで青函連絡船に代わる存在となり、16年3月からは北海道新幹線が乗り入れるようになった。
現在、同トンネルは新幹線が上下線合わせて26本、貨物列車が1日平均38本の計60本以上が通過。運用開始から35年を迎えるが、鉄道トンネルの中ではむしろ新しいほうだ。
だが、国土交通省が先日公表した「令和5年度 鉄道局関係予算概算要求概要」に掲載された青函トンネル内の様子は鉄道ファンに衝撃を与えた。想像以上に内部の劣化が進んでいたからだ。
例えば、路盤がところどころ隆起や沈下が起きてデコボコになっているほか、腐食が進んだ排水設備や送水管の漏水を画像付きで紹介。同概要では青函トンネルの機能保全にかかる費用として31億5100万円を計上しているが、状態を考えれば高額になるのも理解できる。それにしても、保守管理を怠っていたわけではないのになぜこのような状況になっているのか?
「概要にもありますが、原因は高湿度と塩水侵入の大きく2つ。塩分を含んだ海水はコンクリートや金属の劣化を早めるのです。放置しているわけではないものの劣化がさらに進めば運行に支障をきたす恐れもあり、そうなれば本州と北海道が長期にわたって寸断されることになります」(鉄道ジャーナリスト)
JR東日本とJR北海道は今年5~7月、トンネル内の補修工事を行うために日曜日の一部の新幹線を運休している。この工事の目的は架線などの交換だったが、鉄道関係者の間では「より大規模な補修工事が必要」との声も挙がっている。
「30年度に控えた北海道新幹線の札幌延伸の大きな懸念材料となっている以上、それまでには行う必要があるでしょう。ただし、そんな青函トンネル以上にボロボロなのが本州と九州を結ぶ関門トンネル。特に在来線のほうは開通から80年が経過し、すでに20年ほど前から『海底トンネルとしては寿命』と言われています」(同)
陸上のトンネルよりも莫大な保線費用がかかり、耐用年数も短い鉄道の海底トンネル。利便性の高さに疑いの余地はないが、むしろ大変なのは開通後なのかもしれない。