廃止濃厚な「大糸線」の存続に向けた“ウルトラC”とは?

 北アルプスの麓を走る絶景ローカル線として知られるJR大糸線。しかし、沿線は過疎地域のため、特に利用者の少ないJR西日本が管轄する南小谷駅〜糸魚川駅の35.3キロの区間は廃止の噂が近年囁かれている。この3月からは長野・新潟両県や沿線自治体とバス転換を視野に入れた協議に入っている。

「JR東日本が管轄する松本駅〜南小谷駅にはスキー場が多く、夏場も避暑地としての需要があります。1日1往復ながら特急あずさが都内から乗り入れていますが、今回協議の対象になっている南小谷駅からの区間は乗客の大半は鉄道ファンという状況です」(鉄道ジャーナリスト)

 沿線自治体は存続を求めているが、移動の足として鉄道を日常的に利用する者は少ない。現在は上下線各7本しか運行されておらず、地元は完全な車社会。しかも、全国有数の豪雪地帯で冬場は終日運休になることも多く、除雪作業にかかる負担も大きい。
 
「利用者の数はこの30年で10分の1に落ち込んでいます。ここ2年はコロナ禍の影響もありますが、それだけが原因ではないのは明らか。1日2000人以上の利用者がいた函館本線・小樽〜余市間も30年度末までの廃止がつい先日決定したばかり。JR北海道とJR西日本では財政状況が違うとはいえ、このままでは廃止もやむを得ないでしょう」(同)

 ただし、保線や駅などの設備管理、それと列車の運行業務を別々の事業社が行う上下分離方式なら存続可能だと指摘する。

「国内でも地方の私鉄や第三セクターなどで導入例が複数あります。それに新潟県の糸魚川駅〜妙高高原駅を結ぶ、えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長は“地方ローカル線の救世主”と呼ばれる人物。同鉄道の観光列車を大糸線で走らせたこともあり、鉄道ファンからは同社による支援を求める声も聞かれます」(同)

 国や県の支援も必要なゆえに簡単な話ではないが、廃止回避というシナリオも十分ありそうだ。

(高島昌俊)

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