廃止ではなく「共同経営」を選択…JRと民間バス会社「大赤字ローカル線」を復活させる方策

 鉄道もバスも、その多くが赤字経営を強いられている地方の路線。仮に競合関係にあっても「ライバル同士」以前の問題で、少ない客の奪い合いで共倒れの危険すらあるのが現状だ。

 それでも鉄道は、赤字を理由に簡単に廃止することはできず、一方で維持するには莫大な費用がかかる。

 そんな中、JR東日本と「県北バス」の名で知られる「岩手県北自動車」が、同県北部を東西に走るJR山田線(盛岡~宮古)の「共同経営」について、国土交通省から認可が降りたことを2月17日に発表した。

 実は、県北バスも山田線とほぼ並行する形で「106特急・急行バス」を1日12往復運行している。今のところ、共同運行の期間は4月から5年間で、その間はJRの乗車券や定期券でバスの利用も可能となる。

「山田線の23年度の営業係数(100円の運賃収入を得るのにかかった営業費用)は、通学利用者が比較的多い盛岡~上米内間が1841円なのに対し、上米内~宮古間は5120円で、JR東日本管内のワースト8位です。総延長102.1キロの山田線の沿線は、大半が山間部の過疎地域となり、盛岡と宮古を直接結ぶ列車は1日わずか4往復しかありません。今後は両社の間で運行ダイヤなどの調整は必要となりますが、互いに補完し合えるので双方にとってメリットは大きいですね」(鉄道ジャーナリスト)

 こうした鉄道会社とバス会社の共同経営は、22年度から始まったJR四国と徳島バスによるJR牟岐(むぎ)線の阿南~浅川間の例がある。同路線は開始前の21年度の利用者数は541人だったが、22年度は2077人とコロナ禍にもかかわらず3.8倍増と予想を大幅に上回った。

 牟岐線に続いて山田線も利用者増という結果を残せれば、今後はいきなり廃止ではなく共同経営という形で活路を見出す、という選択肢も出てくるだろう。地方のローカル線にとっては、1つの可能性を示すことになるはずだ。

*写真は、盛岡駅に停車中のJR山田線の快速列車

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