陥落が時間の問題とも言われる、ウクライナ東部の要衝・マリウポリ。市内の製鉄所では、化学兵器が使われたかもしれないとの情報もあり、欧米メディアのインタビューに応じた市長は、「街の通りには、遺体がじゅうたんのように敷き詰められている。死者は恐ろしい数で、1万人以上だ。残念ながら、2万人以上かもしれない」と、その惨状を訴えた。
ロシア軍による、ウクライナ東部での民間人虐殺が続く中、ウクライナ・サッカー協会(UAF)が公式インスタグラムを更新。ロシア軍の卑劣な行為を痛烈に批判したのは5日のこと。
「UAFによれば、ロシアの個人間売買サイト『Avito』に、なんと民間人からロシア兵が略奪したウクライナ代表のジャージが、『ブロバルイ付近で戦利品として受け取った』とのコメント入りで、販売されていたというんです。2日にはウクライナ国防省情報総局が、ロシアの兵士がウクライナ住民の家に侵入し、家具などを物色。パソコンやテレビなどカネになりそうな物を持ち去り、ベラルーシで転売していると発表していますが、これが事実なら、完全な国際法違反。しかも、通常『戦利品』というのは戦闘で奪取した敵兵の武器を指すもの。SNS上には《お前らは盗んだものを戦利品と呼ぶのか!》《言葉もない!なんて卑劣な行為だ!》《怪物め!お前たちはマフィア以下の盗賊だ!》といった怒りのコメントが殺到しています」(軍事ジャーナリスト)
略奪品の販売はなにもネットだけではない。ベラルーシ南部ナロヴリャの市場では、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品から、車やバイク、さらには高価な美術品や宝石に至るまで、ありとあらゆるものが販売されているという。英紙タイムズは9日までに、ウクライナに侵攻したロシア軍兵士らが、市民の自宅や商店から略奪したとみられる品物を、隣国ベラルーシから母国へ発送手続きする様子を収めた映像を放映、世界に大きな衝撃を与えた。
「映像は3時間程度で、ベラルーシにあるロシアの宅配サービス会社の支店で、軍服姿のロシア兵ら10人以上が品物を包装し、発送する様子がすべて映っています。また、米ニューヨーク・タイムズの取材に対し、ブチャ在住の女性は『ロシア兵が家々を物色して、テレビやパソコンを戦車に積み込んで慌てて去った』と証言。さらに、米国メディア『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』も、『彼らは、私たちに”戦利品”を売りつけようとしている』という、ベラルーシ南東部マズィルの住民の声を紹介していますので、略奪品を転売していることは間違いないでしょう。ロシア兵を強盗化させた原因は士気の低下ですが、その要因を作ったのが、軍上層部に対する現場兵士たちの不満でしょう。というのも、最前線で戦う兵士たちは食料も行き届かない中、わずかな報酬で毎日命を危険にさらしています。しかも、ウクライナ軍の予想外の反撃により、ロシア兵たちもいつ殺されるかわからない極限の精神状態にある。ところが、北朝鮮同様、特権階級の人間たちにとって天国とされるロシアでは、高官たちによる防衛費横領が日常的に行われ、彼らだけが私腹を肥やしている状態です。つまり、軍内のいびつな現状と極限の精神が、兵士たちのフラストレーションとなって現れ、彼らを盗賊化させたとも考えられます」(同)
ただ、だからといって、ロシア兵による鬼畜の所業が許されるはずはない。
ロシア軍撤退により、次々と明らかになってきた数々の残虐な行為。いまだ、キーウ周辺で繰り広げられた虐殺については、ウクライナによるデマだと主張し続けるプーチン政権に鉄槌が下される日は来るのだろうか。
(灯倫太郎)