国際政治アナリストが続ける。
「しかも、プーチンを倒した新政権はアメリカをはじめとする西側諸国との関係改善に乗り出し、90年にノーベル平和賞を受賞したゴルバチョフ元大統領が目指した道を突き進むことになる。具体的にはペレストロイカ(改革開放)とグラスノスチ(情報公開)による民主化です。その結果、プーチンによって長らく阻害されてきた旧ソ連の崩壊はついに完遂。〝プーチン・ロシア〟の消滅によって、世界地図は大きく塗り替えられることになるのです」
実は件のバイデン発言に相前後する形で、一大政変劇への布石とも言われる政権内の異変が、相次いで確認されていた。
例えば、米メディアで反戦発言を行っていたドボルコビッチ元副首相が3月18日に政府系財団(スコルコボ財団)代表を辞任。23日には国際機関との調整役を担っていたチュバイス大統領特別代表が辞任し、出国した事実が判明した。このほか、3期目の指名を受けたロシア中央銀行のナビウリナ総裁が侵攻開始後に辞意を表明したものの、プーチン大統領から拒否されていた事実なども明らかになっている。米欧露の秘密諜報活動に詳しい国際軍事アナリストが指摘する。
「プーチン政権を支えてきたのはオリガルヒ(新興財閥)とシロビキ(治安や軍事を担うエリート集団)です。最近はオリガルヒの一部からもプーチン批判の声が公然と上がり始め、ハイテク関連の技術者を含む国外脱出者の数は、すでに20万人を超えていると推定されます。長引く軍事侵攻と相次ぐ経済制裁によって、今やロシア経済はガタガタ、もはや破綻状態です。5月初めにはロシア国債の対外償還もデフォルト(債務不履行)に陥るとみられている。ズバリ、プーチンはカネ(戦費)もタマ(武器)もない窮地に追い込まれているのです」
だがルーブルの急落、急激なインフレ、そして増え続ける死者数(兵士)などに対するロシア国民の不満の鬱積も含め、オリガルヒの離反はボディーブローにはなっても、カウンターパンチには至らないという。その上で、最終的にプーチン大統領に引導を渡すことになるのは、主にFSB(連邦保安局=旧KGBの後継機関)とロシア軍で構成されているシロビキの面々だというのだ。国際軍事アナリストがさらに踏み込んで解説する。
「シロビキによるクーデターや暗殺に慄くプーチンは極度の疑心暗鬼に陥り、その結果、FSBの対外諜報部門のトップを務めるベセダ氏をはじめ、複数の幹部らが軟禁状態に置かれています。同様に一時期、消息が途絶えたショイグ国防相も複数の軍幹部らとともに、事実上の軟禁状態に置かれている模様です。シロビキ内の誰がCIAに内通して反逆を企てているのかは本人にしかわからないことですが、プーチンとFSB、プーチンとロシア軍の間には今、修復不能な亀裂が生じ始めているのです」
中でもショイグ国防相といえば、パトルシェフ安保会議書記、ナルイシキン対外情報局長官、ボルトニコフFSB長官とともに、プーチン政権を支えてきた最側近の1人。ところがシロビキを代表するこの4人組のうち、今やプーチン大統領の味方と言えるのはパトルシェフ1人になってしまったと、この国際軍事アナリストは確言するのだ。
*「週刊アサヒ芸能」4月14日号より。【3】につづく