それだけではない。ロシアによる悪魔の国民洗脳は、14年のクリミア半島併合にまでさかのぼる。
「親ロシア派だったウクライナのヤヌコーヴィチ政権が崩壊し、欧米寄りの政権が誕生すると、それに異議を唱えた一部クリミア住民が独立を宣言。近隣のドンバス地方でも分離主義のグループが台頭し、ウクライナ政府と武力衝突するようになった。当時からロシアの報道では『ウクライナは自国民を虐殺している』『我々は同じスラブ民族である同胞を助けなければいけない』と、ウクライナでの軍事作戦の正当性をことあるごとに主張してきました。今回、戦争になって、ロシアの世論がプーチン支持に傾いたのは、この7年に及ぶプロパガンダの成果です」(外信部記者)
00年に大統領に就任して以降は、学校教育でも熱心に愛国教育に取り組んだ。若者たちの間にはネットを通じて情報を入手する進歩的なロシア人がいる一方で、熱狂的な愛国主義者も現れているというのだ。
「ロシア政府は、ウクライナ侵攻から1カ月足らずで、残虐行為を正当化する『愛国動画』を作成し、全国の学校の授業で見せています。小学校では体育館やグラウンドで、ロシア支持の象徴である『Z』の人文字を作るのことを推進。洗脳教育であるのは間違いないが、教師が教育省への点数稼ぎとして子供にやらせているフシもありますね」(元留学生)
ウクライナからロシアへの一般市民の連れ去りもプロパガンダに利用されていると伝えられる。
「ロシア軍は国境に近いマリウポリを中心に、ウクライナ全土で住民の保護を名目としてロシア領への強制連行を行っている。その人数は1万5000人とも言われ、ウクライナ全体では5万人を超える。強制連行の目的は『プロパガンダ要員』としての活用。ロシア国内の政府系メディアで『ウクライナはナチスが支配している』などと証言させているほか、ウクライナに残る親族や知人に連絡させ『ウクライナを離れてロシアに来たほうがいい』と甘言で誘い込もうとしているそうです」(元留学生)
アノ手コノ手の戦争肯定と、ウクライナこき下ろし。ロシア軍の占領地域ではプロパガンダのビラも撒かれ、あくまで正当性を主張しているという。現地で取材に当たっているカメラマンが明かす。
「ロシア軍はウクライナ国民に対しても、プロパガンダに注力。占領した地域でウクライナ政府の悪行を書き連ねたビラを配っている。その内容は『ウクライナ政府は東部で大量虐殺を行っている』というロシアの公式見解だけでなく、『ウクライナ政府は米国の支援で核兵器を開発し、核戦争で世界を破滅させようとしている』『ゼレンスキーは悪魔信仰に取り憑かれている』といった荒唐無稽なものもある。平和時なら落ち着いて考えれば無茶苦茶なのは一目瞭然なのですが、実際にはプロパガンダを真に受けて親ロ派に転向するウクライナ人も少なからずいます」
自国民はダマせても、世界が洗脳を受けることはない─。
*「週刊アサヒ芸能」4月14日号より