欧米に追随する形で“戦争犯罪国”ロシアへの経済制裁に加わった日本。だが、これまで対ロ外交に携わってきた面々はありとあらゆる反国益行為を繰り返し、独裁大統領をここまで増長させた。いったいその「罪」をどう考えるのか。
「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている。(日露平和条約の締結という使命を)これ以上、待たせてはならない。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」
これは色気づいた男子中学生が好きな女生徒に宛てた恋文などではない。この赤面ものの呼びかけは、19年9月5日にウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで、当時の安倍晋三総理(67)が行ったスピーチの一節である。
ここに登場する「ウラジーミル」とは、狂気の殺戮マシーンと化した「21世紀の暴君」こと、ロシアのプーチン大統領(69)のファーストネーム。以来、安倍元総理は2人が「ウラジーミル」「シンゾー」と呼び合う仲であることを自慢げに宣伝し、総理時代に掲げた「地球儀を俯瞰した外交」をハナにかけてきた。自民党有力派閥の大幹部は苦笑交じりに、
「プーチンは今回のウクライナへの軍事侵攻で『独裁者』としての正体を現したが、もともと日本の政界では稀代の『人たらし』としても知られていた」
とした上で、安倍氏をこう断罪するのだ。
「強面と仏頂面で相手を委縮させるだけさせておき、一転、長い握手や軽いジョークで敵の緊張を一気にほぐす。この手練手管でどれほど多くの日本の政治家が『プーチンとツーカーで話せるのはこのオレだけ』と勘違いしてきたことか。中でも安倍さんは、人たらしプーチンにコロリとダマされ、日本の国益を大きく損じてきた戦犯だよ」
事実、プーチン大統領が訪日した16年12月の北方領土返還交渉でも、それまでの「4島返還」から「2島返還」へと、交渉のスタートラインを後退させてしまった。その挙げ句、冒頭で紹介したフォーラムの翌日に行われた首脳会談では、プーチン大統領から「ロシアが得るものは何もない」と一蹴されてしまったのだ。
「当時、外務省は『2島返還を口にすれば、4島返還への道は閉ざされる』『そもそも、ロシア側に平和条約を締結する気はない』と進言していましたが、安倍さんは『ウラジーミルは〝やる〟と言っている』と言い張って、聞く耳を持たなかった。果たせるかな、交渉はロシアに対する3000億円の経済協力という、カネだけむしり取られて終わりというオソマツな結末を迎えたのです」(外務省幹部)
それだけではない。今年2月24日に始まった軍事侵攻後には、政界の一部から「プーチンを説得できるのは安倍氏しかいない」との期待の声が上がった。この「対プーチン特使プラン」は国会でも議論になったが、本人は3月3日に行われた自身の派閥会合で、あろうことか「核シェアリング(米国の核兵器を日本に配備して、共同で運用する構想)」による抑止力の重要性をブチ上げて、話を煙に巻いてみせたのだ。
*「週刊アサヒ芸能」3月31日号より。【2】につづく