コロナ禍でも大手私鉄12社とJR九州は黒字! その理由とは?

 今年2月、大手私鉄各社とJRグループのうち、上場している東日本と東海、西日本、九州の4社は、21年度第3四半期(4〜12月)の決算を相次いで発表。前年度同期には主要鉄道会社19社の営業収支が赤字というコロナ禍の業績不振を裏付ける結果となったが、今年は大手私鉄で赤字だったのは西武と東京メトロ、京成の3社のみ。JRでは九州が黒字となり、19社中13社がV字回復に成功している。

 21年は20年に比べると鉄道各社の輸送人員が増えてはいるが、コロナ前には遠く及ばない。しかも、「以前の水準に戻るのは今後も難しい」と見られており、その状況下でどのようにして黒字化を成し遂げたのか?

「今の鉄道会社は、複数の事業を展開する多角化が当たり前。鉄道部門が会社の看板事業とはいえ、あくまで複数ある事業のひとつ。もともと鉄道以外の事業に力を入れていた会社であれば、他の事業の収益で補填することも十分可能です」(経済ジャーナリスト)

 ただし、なかにはツアーなどの旅行事業やホテル、飲食店のように鉄道以外の部門でも大打撃を受けたケースも多く、どの事業に注力していたかによって命運が分かれたという。

「黒字化させた鉄道各社に共通して言えるのは、不動産部門の収益が高かった。これが下支えとなっています。あと、一部の鉄道会社ではトラック輸送などの物流部門が主力事業になっているところもあり、こちらもコロナ禍で業績を伸ばしています」(同)

 だが、不動産に関しては土地・建物の売却益の占める割合が大きく、安定的に今期のような収益を確保するのは難しいとも。

「今後は住宅販売などの土地開発でいかに利益を出せるか。また、新事業を成功させるといった経営努力も問われるでしょうね。鉄道事業単体では今後黒字に戻せても大幅な利益確保は難しいので」(同)

 鉄道会社は鉄道だけ走らせておけばいい、という時代ではないのだ。

(高島昌俊)

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