国内の鉄道会社では、JR東日本に次ぐ総距離数(4903.1キロ)を誇るJR西日本。これまで関西では業績1位を堅守していたが、先日発表された23年3月期決算ではなんと初めて首位から陥落したことが明らかになった。
新たに1位となったのは近鉄ホールディングス。売上高1兆5610億円、純利益は887億円、JR西日本の1兆3955億円、885億円を上回った。
「といっても、JR西日本が伸び悩んだわけではありません。コロナ禍で収益が激減した鉄道事業やホテル事業、旅行事業が大きく回復。3年ぶりに黒字に戻しています。ただ、近鉄は売上高、純利益ともに前年から倍以上に増やしているのです」(鉄道ジャーナリスト)
中京圏から関西圏にかけて路線を持つ近鉄の総営業キロは私鉄1位となる501.1キロ。他にもバスやタクシー事業も展開しているが、柱はこれら旅客輸送部門だけではない。
近畿日本ツーリストやクラブツーリズムといった大手旅行会社を擁する旅行部門もコロナ禍の業績大幅ダウンから順調に回復。また、関西圏で高いシェアを誇る近鉄不動産をはじめとする不動産部門も好調だ。
だが、今回の1位奪取の最大の要因となったのは物流部門。昨年7月、物流大手の一角である近鉄エクスプレスを完全子会社化したためだ。
「22年度の売上高は9804億円で業界7位。これは日本郵政や日本郵船、宅配大手3社(日本通運、ヤマト運輸、佐川急便)、商船三井に次ぐ規模です。なかでも近鉄エクスプレスは国際航空貨物に強く45ヶ国683拠点(※3月末時点)のネットワークを持ち、この分野では業界2位です」(同)
現在の鉄道会社は多事業展開が当たり前。これはJR西日本にも同じことが言えるが、さすがに世界トップクラスの物流企業を子会社に加えた近鉄グループには太刀打ちできなかったようだ。