2月10日、岸田政権は13都県に適用している「まん延防止等重点措置」の期限を3月6日まで延長した。「医療逼迫を回避する」とお題目のように唱えるが、実態はどうなのか。医療現場の声は政府や御用学者の主張とはまるで違う、怒りに満ちたものだった。
〈座談会出席者〉
A=保健所職員(保健師)
B=コロナ病棟の看護師
C=発熱外来の診察医
─リモート座談会に出席頂き、ありがとうございます。医療崩壊という言葉が盛んに喧伝されますが、病院の内情はどうですか。
B 雰囲気は最悪ですね。今、都内の病院はどこも老人病院と化しています。コロナ入院患者のほとんどが高齢者か体重100キロを超えるような超肥満の人たちです。自力で食事ができず、トイレにも行けない。寝返りも自分でうてないので、防護服を着ながら介護するのが本当に大変なんです。患者1人に医師が1人付き、看護師が数人がかりで介護をします。
─政府や自治体からは「重症者数」「重症者病床使用率」がキーワードとして発信され、重症者で医療が逼迫しつつあるような印象を受けます。
B 入院患者イコール重症患者ではありません。テレビのニュースでよく聞く「重症患者」というのは人工肺や人工呼吸器、人工透析を繋いでいる患者を意味します。ところがそうした重症患者が実際にはいないのが、オミクロン株による第6波の特徴なのです。要介護の高齢コロナ患者には人工呼吸器が必要となる場合もありますが、ご家族が「もう年も年ですし、そこまで苦しい思いをさせてまで延命しなくても」と治療を辞退される場合もあります。そういう方は重症患者に含まれません。何週間も入院して、そのまま亡くなる方がいても、医師が死亡診断書を書く際に「老衰」と書くべきか「コロナ関連死」と書くべきか悩む症例が多いのです。持病や高齢などで間もなく寿命が尽きる人がたまたまコロナに感染した後に亡くなると「コロナ死」と認定してしまう。実態として「コロナ死」はほとんどいないということです。
C その通りです。オミクロン株による死亡率はワクチン接種の効果もあって、圧倒的に低い。残念ながら治療の甲斐なく亡くなっているのは、重い障害がある方や、余命半年と宣告されたような末期ガンの患者、認知症で自力でご飯を飲み込むことも困難な方などです。死因に「○○ガン」と書くとコロナの診療報酬加算が取れなくなりますからコロナ死に計上されますが、ニュースで大々的に「コロナ死亡者何人」と数字だけが一人歩きしている。実情とはかなり乖離していると思います。
B 「重症患者」「中等症患者」という定義も曖昧です。コロナ専門病院によっては、職員が燃え尽きて大量離職しないように「コロナで重症化したら大変な人」を重症患者扱いして個室に入れ、その結果、コロナ以外の重篤な患者を断っているところもあると聞きました。
A 昨年、病状が悪化した妊婦が入院できず、お腹の赤ちゃんが助からなかった悲劇は、全国の医療従事者にとって衝撃でした。ガンや難病で治療中の患者や妊婦が重症化しないよう、あらかじめ入院を勧めています。あとはBさんが言っていたように、オミクロン株が流行してからは、過度の肥満の中高年が入院するケースが多くなった。体重100キロ前後のご主人の世話を持て余した奥さんから、「看病もキツいし、家で倒れられても、救急車で運び出すこともできない。頼むから入院させて下さい」と懇願されます。もともと肥満で気道が圧迫されている上に、オミクロン感染は喉が腫れ上がるので、急に呼吸が困難になるのです。
*国の発表はウソだらけ「オミクロンの重症者はいない」【2】につづく