世界保健機関(WHO)の執行理事会は1月25日、テドロス事務局長を次期事務局長の唯一の候補者として指名。それにより、同氏の事務局長継続がほぼ確実になった。ところが、前日の24日、テドロス氏が執行理事会で演説した内容に対し「無責任極まりない」「組織の長として完全に終わっている」といった批判の声が集まっている。
「同氏は演説の冒頭『われわれは新型コロナウイルス感染症の世界的な緊急事態を終わりにすることができる、今年できる可能性がある』と述べたのですが、なんのことはない、これは今年の半ばまでに世界の人口の70%がワクチン接種を完了した場合の話。実際には、昨年末までに人口の40%にワクチンを接種するという目標を、WHO加盟194カ国のうち半数が達成できていない現状で、特にアフリカでは85%の人々がまだ一度もワクチンを接種していません。それでいて、接種目標が達成できなければ、新型コロナ収束はほど遠いというんですからね。そんなことは子供でも分かる話で、だからこそ、その格差を埋めるためにWHOとして何をどうしたらいいのか、というビジョンを示すべきでしょう」(通信社記者)
さらに、かねてから中国寄りとされるテドロス氏だけに、SNS上には《北京五輪前に「今年中に深刻な状況を脱する」って、意味深だな》《中国のオリンピック開催前に忖度して少しでもイメージをよくする魂胆では》といった意見も。
「テドロス氏については、中国をあからさまに擁護するような発言や、同氏の出身国であるエチオピアと中国との親密な関係などから、『中国の傀儡』と批判する声もあり、新型コロナウイルスへの対応をめぐって、アメリカのトランプ前大統領とも対立。アメリカがWHOからの脱退を表明したこともあり、またテドロス氏が事態を過小評価したために感染が拡大したとして、ネット上では辞任を求める署名が100万人を超えたこともありました。その後、バイデン政権ではWHOからの脱退を撤回、協力関係も改善していますが、テドロス氏が中国寄りであることに変わりはありません。今回、事務局長選にあたっては、ヨーロッパやアフリカ、アジアなどの28カ国がテドロス事務局長の再任を提案、ほかの候補の提案はなかったといいます。そのため、5月の年次総会の投票で3分の2以上の支持が得られれば、テドロス事務局長が再任され、来年8月から2期目に入ることになりますが、2期目となればよりWHO内での発言力も当然増すはず。中国への忖度の度合いも気になるところですね」(同)
すべての人々の健康を増進し、保護するため互いに他の国々と協力する目的で設立されたWHO。その基本理念が特定の国にだけ向かわないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)