オミクロン株を発見した南アフリカの研究チームは、感染者が急増した割に重症者や死亡者は少ないと報告している。それだけに日本でも自宅療養が増えていくとみられているが、家庭内感染を防ぐことは可能なのか。
「家族と生活空間を分けて自宅療養しても家庭内は密な空間なので、同じトイレやお風呂を使っていれば家族に感染すると考えるべきでしょう。高齢者や子供が感染する前にホテルで療養するのが一番の対策です」(松井氏)
いくら重症化しにくいとはいえ、死亡したケースも報道されている。デルタ株は血液中の酸素濃度をパルスオキシメーターで測り、95%以上なら正常という症状判断の目安があったが、見過ごしてはいけない重症化のサインはあるのか。
「全身倦怠感、だるさ、発熱、それ以外に肺炎を起こすこともあるので、デルタ株の時と変わらず95%をメルクマール(目印)にしています。しかし数字だけでは一概に判断できないので、酸素濃度がどんどん下がり出した時は危険信号です」(上理事長)
もうひとつ厄介なのは、オミクロン株は2回ワクチンを打っても感染しやすい点。英国健康安全保障庁は12月末、3回目のワクチン接種の有効性について、ファイザーやモデルナの2回目接種から20週間の段階で有効性はわずか10%。それが3回目の接種から約4週間の段階になると、効果は70%前後まで上昇し、発症リスクが低くなると報告している。
「なるべく早く打ったほうがいいでしょう。特に高齢者はもちろんですが、基礎疾患を持っている人や健康診断でメタボ判定などを受けた人は全員だと思ってください。重症化を抑える効果は考えられます」(勝田教授)
それにしても日本はなぜブースター接種(追加接種)が進まなかったのか。
「単純にワクチン接種が遅かったからです。先進国が集まるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で日本の接種率は最下位で、他国はオミクロン株が起こる前からデルタ株が冬に流行すると思って、その前に高齢者にワクチン接種を完了させようとしていました。厚労省はそれがわからなかったのか、無視したのか、いずれにしろ2回接種から原則8カ月以上という議論をしたことで、年明けまで3回目の接種がずれ込むことになったのです。冬前に追加接種をする必要がないと判断したのは先進国で唯一で、厚労省の判断ミスです」(上理事長)
ブースター接種で気がかりなのは、ワクチンのストック。岸田総理は「前倒し」の方針を掲げているが、どれだけ用意できるのか。勝田教授は懐疑的な目を向ける。
「それが不透明なんです。厚労省がどれくらい在庫を抱えているのかまったく公表しないので、疑心暗鬼を呼んでいるのが現状。私自身も大阪市からワクチン追加接種の連絡が来ました。それで1月の都合のいい日を伝えたのですが、その後、全てひっくり返されたんです。大阪市からは、国からワクチンが来ないので1月はキャンセルさせていただきます、と。それで改めて2月の都合のいい日を伝えることになったのですが、要はワクチン接種が順調にできていないことがわかったのです」
不安は残るが、今は感染者数が増えても極端に恐れず、冷静に対応して流行を乗り切ることが大切だ。
*「週刊アサヒ芸能」1月27日号より