正しく恐れる「オミクロン」の処方箋【2】米は3分の1がノーマスクのワケ

 猛威をふるうオミクロン株に対し、主要各国はそれぞれ対策を講じているが、日本が参考にすべき成功例はあるのか。国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう話す。

「どこの国も今のところ手探り状態。これだけ感染者が増加すれば、成功した例はないと言えるでしょう。『ゼロコロナ政策』を掲げる中国ですら、北京五輪を間近に控えて実力行使で本気で抑え込みにかかっていますが、ゼロにすることはできていません。それだけ、コロナを完全に封じることが難しいことを証明する形となりました」

 強硬策の中国は西安、河南、安陽の3都市をロックダウン。特に安陽は対応が早く、84人の感染者のうち2人にオミクロン株の感染が確認された時点で、すぐに都市封鎖に踏み切る厳戒ぶり。検査以外の外出を禁じられた住民も多く、食料不足に陥っていた。

 一方、アメリカは、大手ユナイテッド航空の約3000人の従業員がコロナに感染。人員不足で欠航が相次ぎ、流通もストップする危機に直面するも、ジョー・バイデン大統領(79)は国民を上から押さえつける政策を取っていない。

「バイデン大統領は一貫して、ワクチンを打ち、移動する時はマスクを着用するように呼び掛けています。現時点でロックダウンは考えておらず、入院を要する重症者と死者の大半はワクチンを打っていない人だと強調している。最近、カリフォルニア大学の医者が『オミクロンは季節風の風邪と変わらない』とツイートして話題になっていましたが、感染者が激増しても国民は落ち着いていて、そこまでパニックは見られません」(山田氏)

 1月13日に発表した最新の対策も、国民向けに高性能マスクを無料配布すること。アベノマスクより性能はよさそうだが、国民の3分の1がマスクをしておらず、言うことを聞かない人は自己責任で切り捨てるというのがコロナ政策の基本路線である。

 そんな中、岸田総理は感染急拡大を受けて、外国人の新規入国を原則停止する水際対策を2月末まで延長することを決めた。外務省医務官の経験を持つ関西福祉大学の勝田吉彰教授は、その狙いを説明する。

「水際対策の本来の目的は、感染のピークを後ろに遅らせることにあります。感染を100%防ぐことはできない。危機管理の基本は最初に厳しくしてから、だんだんと緩めていく。何が正しいか、正しくないのかはフェーズ(局面)によって変わるので、国内の感染者数が増えきったら、緩める判断が求められます」

 それでも、現段階での延長に疑問を投げかけるのは、上理事長だ。

「すでに国内で流行している状況で実施しても、効果は限定的です。世界で鎖国している国はまれで、新規で外国人が入国する際、PCR検査を徹底していれば解除していいと思います」

 楽天の三木谷浩史社長も自身のツイッターで、

〈今更、新規外国人を入れないことになんの意味があるのか? 判断があまりに非論理的すぎる〉

 と、批判を展開して物議を醸していた。

*正しく恐れる「オミクロン」の処方箋【3】につづく

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