昨年来のコロナ禍で飲食業界は大ダメージを負った。飲食店を経営する兼業芸人は多いが、この2年はエンタメの本業と副業がダブルで影響を受けている。だが、飲食店経営をめぐっては、その以前から心理的なダメージを被るベテラン芸人もいるようだ。“関西の焼肉銭ゲバ”ことたむらけんじも、そのひとり。
たむけんが焼肉店を経営するきっかけは、妻の母。続けていく気力がなくなったお義母さんから「じゃあ、僕がやりますわ」と経営権を引き受け、13年前に大阪府内に1号店をオープンさせた。右も左もわからないスタートだったが、芸人仲間が方々で悪口を織り交ぜながらPRしてくれたため、売り上げは急伸。07年には年商6億円を突破。大阪・南船場にオープンした2号店は、月の売り上げが3500万円に達した。ここまでは順風満帆だった。
「08年に愛知・名古屋店で食中毒が発生。営業禁止処分を食らっています。記者会見を開いて、名古屋店が再開するまでは関西の3店舗も営業を自粛しました。さらに16年には、奈良県にオープンしたカフェのプロデュース料をめぐって、西宮市のレストランと裁判沙汰に。たむらは30万~40万円、レシピや技術を教えた店側は130万円を提示して、衝突しました」(週刊誌記者)
そんなことがあっても、たむけんから人が離れないのは彼の男気ゆえだ。自ら会社を経営しているが芸人と飲食の収入割合は9:1だそうで、地元の関西では7~8本のレギュラー番組を抱えているため、芸人一本で十分食えている。吉本興業とは20年1月からエージェント契約に切り替えているが、この決断も功を奏した。
一方、2回も不貞がバレながらも妻子と別居・離婚にいたっていないのは、“残念な兄”こと千原せいじ。10年に、貧乏芸人たちの食い扶持確保のために居酒屋「せじけん」をオープンし、以降およそ6年かけてピザ店やパーソナルトレーニングジム、バーや鳥料理店、ダンススタジオなど事業展開した。ところが“残念な”事態になった。
「『せじけん』は、いつ行っても芸人に会えるという口こみで大繁盛でした。なのに、毎月なぜか20万円の赤字。なんでも、バイトしていた後輩芸人が少しずつレジから”ちょろまかして”被害総額は200万円ほどになったとか」(前出・週刊誌記者)
関西では辛口コメンテーターという新たな地位を確立した130Rのほんこんも、08年にお好み焼き店に続いて焼肉屋店をオープンした際、運転資金の着服被害に遭っている。しかも横領していた料理長、経理担当、店長の3人は行方知れずという。
関西人ならではの人の善さで大損した実業家芸人たち。飼い犬に手を噛まれた痛みは計り知れないか。
(北村ともこ)