吉本興業所属の芸人・たむらけんじが12月12日、吉本と「専属エージェント契約」に向けた交渉を行ったと自身のインスタグラムで報告した。たむらは会社と対等な話し合いができたことを夢のようだと述懐し、「ギャラの開示もしてくれた」と明かしている。
ただハッシュタグでは「#ギャラの割合が納得いかん」とも明かしており、今後の交渉については「#これはトコトンやります」と長期戦で臨むつもりのようだ。大阪吉本所属の芸人としてはおそらく唯一の専属エージェント契約になるとのことだが、同契約について海外のエンタメ事情に詳しい芸能ライターはこんな見方を示す。
「エージェント契約が当たり前となっている欧米から見れば、吉本の制度が果たして《専属エージェント契約》と呼べるものなのか甚だ疑問ですね。そもそもこれまでギャラが開示されていなかったこと自体も驚きですが、最も気になるのはたむらが強調する《ギャラの割合が納得いかん》という話。芸人の世界では《5:5》や《6:4》といった配分をよく耳にしますが、専属エージェント契約のもとで吉本側がエージェント業務に徹するのであれば、吉本の取り分は多くても25%止まりになるべき。しかし、たむけんが割合(配分)で揉めているということは、従来のギャラ配分と大差ない数字が示されたのではないでしょうか」
何事も契約の国であるアメリカでは、スポーツ選手でも芸能人でもエージェント契約が当たり前。代理人が得る報酬も厳格に定められており、最も低率のNFLではわずか3%に抑えられている。他のプロスポーツでも5%が業界標準で、企業とのスポンサー契約では10〜20%と代理人の取り分が増えるものの、その割合は《5:5》や《6:4》には遠く及ばないのが現実だ。
「芸能の世界ではニューヨーク州の俳優組合が最大で10%と定めており、カリフォルニア州では上限が25%と高いものの、実際の契約はやはり10%前後に収まっています。そもそも吉本の専属エージェント契約だと事務所は営業活動のみを担い、日程管理や送迎、マネージャー業務は行わないとされており、アメリカ風の契約と内容に大差はないはず。たむらとギャラの配分で折り合わないというのは、吉本側の提示がその常識から大きく逸脱したものだったからではないでしょうか」(前出・芸能ライター)
たむらの場合、自ら運営する焼肉店の運営会社があり、そこを個人事務所にできるのがメリット。その強みを活かして、吉本と本場アメリカ並みの低率で専属エージェント契約を交わしたいというところだろう。
(北野大知)