時短制限解除で「協力金バブル」崩壊!? 一転苦境の店が続出か

 現在、日本の人口は1億2512万人、このうちコロナの感染者数は172万人。10月25日の新規感染者は153人だから、感染率でいえば限りなくゼロに近い。と、第6波の到来は十分注意しなければいけないが、日本の感染状況はずいぶんと落ち着いた。

 そこで東京都や大阪府など都心の5都府県では飲食店に対する酒類の提供時間制限や営業時間短縮の要請を解除。営業の縛りが無くなったという意味では“かつて”の日常に戻ったわけで、これによりコロナ対策の認証店への協力金や助成金も廃止されることになる。

 だから飲食関係者からはさぞかし喜びの声が聞こえてくるかと思いきや、「実はこれからが厳しさの本番」との複雑な感想が漏れている。

「10月上旬に東京商工リサーチが約8000社の企業にアンケートを行ったところ、7割以上の会社が忘年会は行わないと回答しています。飲食店にとっては年末年始の書き入れ時の大きな収入減が失われるわけで、また、東京などで営業時間の制限を緩和しても飲み屋街の人出は以前ほどではない。第6波への懸念を抱く人は多く、リモートワークやおうち時間の充実といった生活習慣の変化などで、酒類を提供する飲食店に客足がいつ戻るか、関係者が不安に陥るのも当然でしょう」(経済ジャーナリスト)

 客足が部分的にしか回復しない中、さらに頭が痛いのが、行政による補填が無くなること。もともと大して儲かっていない店でも、要請に従っていれば一定額の協力金・助成金がもらえたところ、それが出なくなる。行政による支援開始当初は、一律6万円が支払われていたことで、小規模の個人経営店などではかえってコロナ前より儲かってしまい、「協力金バブル」などと言われて制度の矛盾が指摘された。そこで21年4月に「一律」を「規模別」に見直すこととし、東京都では10月24日までの協力金は中小事業者で1日2.5〜7.5万円、大企業は上限20万円を受け取れることができた。それでも全ての制度はあるところで線引きが行われるため100%実態には沿わないもので、事によれば本来なら淘汰されていたかもしれない店の延命ににつながっている事例も指摘されていた。

 協力金・助成金にどれだけ頼っていたかは、企業の匙加減によるところが大きいので一概に数字を引っ張ってきて比較できるものではない。だが、業績の大きな嵩上げになっていたのも事実。

「例えば同じ居酒屋チェーンのワタミと、『はなの舞』などを運営するチムニーを比べた場合、22年度3月期の第一四半期で見れば、ワタミが受けた助成はざっと8億円で経常利益は12億円のマイナス。かたやチムニーは助成が30億円で経常利益は17億円台のプラスです。売り上げ規模で言えば、ワタミは同時期が140億円で、チムニーは16億に円満たず。ワタミは大規模な焼き肉屋への移行を行っているので、同じ居酒屋でも業態や店舗構成が異なりますが、チムニーは21年度の経常利益が45.5億円の赤字だったので、チムニーが助成によってかなり救われていたことが分かります。ほかにも、助成を得たことで黒字化している飲食業の会社はいくつかあって、果たしてこれからも黒字を維持できるか疑問に思います」(前出・ジャーナリスト)

 助成を受けていた間、ウィズコロナ、ポストコロナのリベンジ消費を得る手が打たれていればいいのだが、もし濡れ手で粟で「赤字が解消されてラッキー」などと悠長に構えていたのであれば、そういった会社は早晩姿を消すだろう。

(猫間滋)

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