現在、10都道府県に発令中の緊急事態宣言。それが東京や大阪など大半の地域で期限の今月20日をもって解除され、「まん延防止等重点措置」へ移行することが濃厚になってきた。
「政府としては、その後東京オリンピック開幕(7月23日)までの1カ月程度を重点措置の期間として想定しているようなので、そうなれば、飲食店への営業時間短縮要請などの対策が継続となるはずです。つまり、飲食店にとってはまだまだ冬の時代が続くことになるでしょうね」(全国紙政治部記者)
ところが、ただでさえ収入が激減している飲食店をさらに苦しめているのが、各自治体が飲食店への営業時間短縮要請の見返りとして支給している、協力金の未払い問題だ。
都内にある居酒屋の店主が怒りを込めてこう語る。
「今年1月の緊急事態宣言の際に休業を決め、協力金が支給されるまで蓄えた資金で賄うつもりでいたんですが、1月の協力金が振り込まれたのはなんと4月下旬。3月8日〜31日までのぶんは、まだ1円も支払われていない状況です。都の担当者に聞いても、そちらが提出した書類に不備があり、訂正してもらったため手続きが遅れている、と、まるでこちらに責任があるから支払が出来ない、という言い方。運転資金もほとんど底をついている状態ですし、このままの状態が続いたら倒産は避けられない。見殺しにされるかと思うと、悔しくてたまりませんよ」
東京都によれば、1月上旬から3月上旬に時短営業を行った分については、5月中に9割前後の支給が終わっているものの、3月8〜31日分の支給率は50%程度で、遅延理由の多くが提出書類の不備によるものだという。別の飲食店オーナーもこう言って首をかしげる。
「なにせ協力金の申請には、提出しなければならない書類が多く、持続化給付金と比べると準備が大変です。そのため、私も1月に申請した時には何度も不備を指摘され、今回は行政書士にお願いして3月中旬に書類を提出しました。それから、すでに3カ月。今もまったくの音沙汰なしです。なにせ、家賃の支払いだけは待ってくれませんからね。今月末までに入金がない場合は、うちも午後9時以降も営業するしかない。倒産してから協力金をもらってもしかたがない。もう、行政を当てには出来ません」
東京都の場合、午後8時までの短縮営業に応じた飲食店には協力金として、1店舗あたり1日6万円が支払われることになっている。また、宣言解除後も午後9時までの営業時間短縮要請が続いているため、応じた場合には1日あたり4万円の協力金が支払われる、とされている。だが、実態はこの有様だ。前出のオーナーが続ける。
「飲食店の場合、アルバイトを減らしたとしても、家賃などの固定費は休業している間も発生し続けてしまう。そこが最大のネックなんです。新宿あたりでは、夜の見回り隊も出没しているようですが、時短を素直に受け入れる店がどのくらいあるか。世間ではオリンピック問題であれこれ騒いでいますが、こちらは日々の生活でそれどころじゃありません。政府には本当に憤りしかありませんよ」
党首討論で五輪開催について「私は逃げない」と語った菅首相。五輪開催したか頭にないこの首相に、飲食店関係者たちの声は届いているのだろうか。
(灯倫太郎)
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