そして目下、大幅な増税に悩まされているのは、当時は批判的な声にすら晒された夜の街を中心とする飲食店だ。中でも、個人事業主の経営者は四苦八苦のありさまで、新宿・歌舞伎町でバーを経営する女性からは悲痛な嘆きばかりが聞こえる。
「去年の話をするなら、私がいただいた協力金は約1300万円ほどです。もちろん、税金なのでありがたいとは思っていますよ。ただ、それで普段より儲けたなどと言われると抵抗がありますね。今年の国保や住民税などは、いただいた額からざっくり4割強ほど。国保に関して言えば、普段の5倍です。もちろん、支払いました。つまり、世間様が言うように協力金で丸儲けというのはないのです。はっきり言えば、通常営業に比べれば儲け分がないだけ、収入減なんです」
東京の城南地区で小料理屋を経営する店主も、6月に税金の通知が来て愕然とした一人だ。
「昨年は緊急事態宣言とまん防ばかりで、店を開けても軒並み時短要請。協力金は1000万円ぐらいもらったよ。その協力金が収入として加算されて税金が高くなるとは聞いていたけど、まさかここまでとは。昨年は年間10万円程度だった保険料が102万円! 10倍だよ。都民税も月1万円強だったものが通年98万円だって。その上、8月、11月と年2回納める事業税が2回分で年70万円‥‥。昨年の年収をもとに確定申告ですでに300万円近く取られてる。協力金から600万円は回収されちゃったってわけだよ」
先の新宿の経営者らもそうだったが、べらぼうな国保課税の上がり幅だ。しかし、これにはからくりがある。女性バー経営者が言う。
「普段だと、売り上げに対して相応の経費がかかります。うちの場合、その中心は酒類になりますね。その他にも、氷やお通しやアルバイトへの支払い‥‥。でも、コロナで休業していた時はそれがかからない。だから、いただいた協力金はみな〝売上金〟ということになってしまう。つまり、税制上認められる必要経費がなく、1300万円全てに課税されてしまう。何もしなければ、グンと税金が上がってしまうというわけなんです」
ちなみに、厚労省が課している単身世帯への国民健康保険科は収入1140万円〜で年102万円となっている。1300万円まるまるの収入で算出すれば、上限はMAX、月にして8万5000円の保険料となる計算だ。これが、一個人にとってどれくらいベラボーな額かは容易に想像がつくだろう。
「私の場合、(コロナ禍の)早い段階から同業の方などから話を聞いて、対策を取っていました。知り合いのバー店主が『後で税金がっぽり持っていかれるからね』と注意してくれたので、協力金のうち500万円は税金対策としてストックしていた。それでなんとか支払いをした、という感じですね」(女性バー経営者)
言うまでもないが、コロナ休業中も固定の出費はある。店の家賃はその最たるものだろう。また、通常2年に1度ほどある更新料などの支払いも固定費であり、普段売り上げがある店であればあるほど、やはり、協力金でプラスになる――が、実はそんなことはありえなかったようなのだ。
*飲食店経営者が青ざめる「コロナ協力金」強制回収が始まった!(3)につづく