10月5日はスティーブ・ジョブズの命日で、今年は没後10年に当たる。ジョブズといえば言うまでもなく、アップルの共同設立者でiPhoneを誕生させた人物。その独創性やカリスマ性から彼を信奉する人が多く、後を継いでアップルCEOに就いたティム・クックが毎年iPhoneの新モデルを発表する度に、ツイッターでは「ジョブズが生きていれば…」とその死を悼むつぶやきがあがるのが恒例行事となっている。14年に「沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか」という経済ノンフィクション本が出版された際、「クックを名指しで批判した話題作」と宣伝され、話題になったこともある。
例年9月上旬から中旬の間に新作が発表されるiPhoneの新型モデルだが、今年も9月15日に発表があり、日本でも9月24日に発売となった。今年はコロナの感染対策があって完全予約制。それでも1分1秒でも早く手にしたいと、東京・丸の内の直営店前には当日朝、深夜から並んだ20人ほどの行列ができた。それ以外では予約・入荷待ち状態で、発売後に直営店に予約した場合だと、ようやく今週辺りから手にした人が出始めたはずだ。
と出だしこそ好調なiPhone新モデルの「13」だが、実はそれほど人気がないのでは?という数字も同時に出ている。
「スマホやタブレットの消費動向調査などを行っているMMDLaboが9月中の『13』発売直前に行った市場アンケート調査では、iPhone利用者のうち『13』シリーズの購入を予定・検討している人は33.7%で、20年に発売された『12』シリーズで行われた同様の調査の45.6%から12ポイントも減少していたとされています。スマホの買い替え時期はおよそ2年間使用した後。だから今回は18年発売の『X』シリーズ、19年の『11』シリーズを購入した人がその中心だと考えられます。ただ今回の『13』シリーズの利点は、映画のように奥行きのある動画が撮影できる『シネマティックモード』とバッテリーの駆動時間が長くなったという2点に大きく限られ、マイナーチェンジとの評もあります。アメリカの価格比較サイトが行った調査でも、76.8%の人が『13』シリーズへの買い替えを考えておらず、約64%の人が『(新型iPhoneは)エキサイティングでない』と回答したという結果が出ています」(ITジャーナリスト)
もちろん今回の「13」シリーズは第5世代移動通信システムの5G対応だが、それは前作の「12」シリーズも同様なので、5G対応という点では既に「12」シリーズに需要は吸収されたという面もあるかもしれない。また5G対応需要で言えば、今回の「13」シリーズの登場で“型落ち”になった「12」シリーズは7000〜1万2000円ほど値下げとなって、むしろ「iPhone12」は「iPhone13 mini」と同じ価格帯になったという“お得感”が目立つ結果にもなっている。
「モバイル端末というハード面だけから見れば、韓国のサムスン電子や中国のシャオミなどから既に複数の5G対応端末が出ていますし、しかも広げると大画面が展開される折り畳みモデルなどが出ていてiPhoneよりよほど革新的だとも言えます。端末そのものの革新性よりもアップルウォッチやワイヤレスイヤホン、ヘルスケアアプリなど、周辺機器やアプリとの連動で客の囲い込みを図ろうとしている今のアップルを見ていると、ジョブズの信奉者じゃなくとも『ジョブズがいたらなあ…』と、どうしても想像が働いてしまいますね」(前出・ジャーナリスト)
考えてみれば「13」というのも西洋だと不吉な数字に当たるわけで、はやりアップルはジョブズの呪縛から逃れられないのか。
(猫間滋)