中国機の異常挑発!「台湾有事は北京五輪後」米高官予測に岸田首相は…?

 毎年10月1日は中国では「国慶節」という、毛沢東が中華人民共和国の成立を宣言した建国記念日に当たるということで、大型連休に入る。ところが現在、その帰趨が大きな国際的紛争の火種となりかねないと周辺国が注視している中国と台湾の関係を巡って、中国航空機が台湾の防空識別圏(ADIZ)へ無断侵入を繰り返し、当事者はもちろん関係諸国をやきもきさせている。

「国慶節に入った10月1〜4日の連休中にADIZへ中国機が無断侵入を繰り返した回数は149回に上ります。今年は10月1〜7日の7連休ですが、中日の4日に至ってはその数が56回にも及び、過去最多の数字になりました」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 これを受け、世界的に非常に騒がしくなる。アメリカのネッド・プライス報道官が「深く憂慮する」とのコメントを出せば、対する中国も華春螢報道官が「(この発言は)『1つの中国』の原則に反する厳重な違反」として、スポークスマン・レベルで対峙。台湾を巡る米中対立は休日おかまいなしにいや高まる。

 さらに同日4日、トランプ政権で国家安全保障担当の大統領補佐官だったハーバート・マクマスター氏がこの状況を受けてある“予言”を行った。ワシントンのシンクタンクで行われた記者懇談会の場で、「最も危険なタイミングは来年になるだろう」と、来年2月の北京冬季五輪以降に武力行使の可能性があるとの見解を述べたのだ。

 マクマスター氏は“予言”の根拠として、2014年にロシアのソチで冬季五輪が行われた直後に、ロシアがクリミア半島を併合してウクライナに侵攻した例を挙げた。

「1つの見方として、自国開催の五輪終了後に何かしら動き出すというのはある意味、正鵠を射たものと思われます。五輪は平和の祭典である一方で極めて政治的に利用されるものでもあるからです。五輪の当事国ではありませんが、例えば08年にやはり北京で夏季五輪が行われ世間の目がこちらに注がれている最中に、グルジアで同国とロシアが衝突するという紛争が起こったこともありました。また、18年に韓国の平昌で五輪が行われた直前には、北朝鮮が突然、南北会談を韓国側に持ち掛けたということもありました。それまでに北朝鮮は、ミサイル発射や核実験を繰り返して煽れるだけ南北間の緊張を高めていたにもかかわらず、のタイミングでした」(前出・ジャーナリスト)

 中国・台湾の緊張関係と言えば、今年3月には中国が台湾産パイナップルの輸入を禁止し、さらに9月にはバンレイシとレンブの両果物も禁輸したことで、分かりやすい兵糧攻めとして世の反感を買ったばかりだ。つい最近も、中国が9月16日にいきなりTPP(環太平洋経済連携協定)への加盟を申請したかと思えば、1週間後の23日に遅れて台湾も加盟申請を行うという凌ぎ合いが起こったばかりだ。これに対しては、「中国の主眼はTPP加盟にはなく、台湾の加盟に対する先制攻撃」と見るのが一般的で、何かにせよ両者は対立を深めている。そして年が明けて中国はコロナ禍で困難なオリンピックを無事終えた、というタイミングで何かしでかすのでは?と考えるマクマスター氏の見方はむしろ根拠は十分過ぎるとも言える。

 もし中国が台湾に侵攻ともなれば、東アジアの権力バランスを失効させる、とんでもない有事になるのは必至。となれば日本はどうするのだろうか。

 岸田政権が正式に発足した翌5日、岸田文雄首相はさっそくバイデン大統領との電話会談に臨み、「ジョー」「フミオ」と呼び合う関係を構築したという。その際、新たな国際秩序の中での日米安保体制の確認も行い、中国からの脅威があった場合、尖閣諸島もその適用対象であるとの言質を取り付け、中国による東アジアでの「一方的な現状変更」がもたらされる場合には、共にこれに反対する立場を確認したという。

 となれば、北京五輪後に中国が対台湾で大きな動きに出た場合、岸田政権は発足から半年ほどで大きな試練に晒されることになる。目下のところ低支持率・低株価でスタートした岸田政権への周囲の期待は薄く、14日解散・19日告示・31日投開票の衆院選がまずは岸田内閣最初の試金石で、来年夏の参院選を前に「最短9カ月」の命といった見方があるが、その前に来年2月の北京五輪後の「最短6カ月」というシナリオも想定しておいた方が良いかもしれない。

(猫間滋)

ライフ