岸田政権を誕生させた「三悪人」の野望(1)怒濤の「アベノフォン」攻撃

 岸田文雄・第100代総理大臣の誕生を巡り、背後には強大な力を持つ「三悪人」の存在が‥‥。総裁選でがっつりと金玉を握られ、頭が上がらない新総理は言われるがまま、野望を叶える手助けをするハメとなるのか。「安倍終身総理」を支える、トホホ新総理を巡る舞台裏をレポートする─。

 密室から「悪人」たちの高笑いが聞こえてきそうな自民党の役員人事が10月1日に発表された。

「総裁選を争った行政・規制改革相だった河野太郎氏(58)に対する広報本部長への起用は明らかな降格人事。外相経験もある河野氏にとってそれだけでも屈辱なのに、党三役のひとつ、総務会長に当選3回の福田達夫衆院議員(54)が『目玉』として起用された。福田氏といえば、総裁選レースの序盤に若手議員を煽って河野氏を推していた1人。それでいながら、1回目も決選投票も岸田氏に入れてハシゴを外しています。そんな福田氏を河野氏より格上の人事に抜擢して辱しめる戦術を『いい人』の岸田文雄新総裁(64)が考えつくとは思えません。裏で安倍晋三元総理(67)と麻生太郎新副総裁(81)の鶴の一声があったともっぱらです」(政治部記者)

 勝てば官軍負ければ賊軍とばかりに、9月29日の総裁選で岸田氏の勝利に貢献した各派閥は、「論功行賞」人事の恩恵にあずかっている。

 10月5日発売の週刊アサヒ芸能10月14日号締め切り段階で新内閣の顔ぶれまでは判明していないが、人事で岸田氏が最大限に配慮しているのは、総裁選で暗躍した最大派閥・細田派の安倍氏と第2派閥・麻生派の麻生氏であることは間違いないだろう。9月30日付の朝日新聞で、

〈新政権で安倍、麻生両氏の存在感が高まれば、「傀儡政権とみられる」(岸田氏周辺)との不安が漏れる〉

 と、報じられるほどの股裂き状態だが、それほど2人のなりふり構わぬパワープレーは総裁選の結果を左右するものだった。

 その「標的」になったのは、序盤から総裁選レースのトップを走っていた河野氏だ。

「もともと『脱原発』や『女系天皇容認』を主張していて、保守派の安倍氏とは水と油。それでも最初は相手にしていなかったのですが、知名度の高い小泉進次郎氏(40)や石破茂元幹事長(64)と『小石河連合』を結成したことで、安倍氏と麻生氏の逆鱗に触れたのです」(政治部デスク)

 安倍氏と石破氏の因縁は、第1次安倍政権下の07年参院選までさかのぼる。歴史的惨敗後に石破氏が、

「総理は『私か、小沢代表の選択だ』と訴えたのに、有権者にどう説明するのか」

 と、退陣を迫って以来、不倶戴天の敵となった。

 麻生氏も同様で、09年の麻生政権末期に「麻生おろし」の旗を振ったのが石破氏。共通の仇敵の登場に麻生氏は、派内から河野氏が出馬しているにもかかわらず、岸田氏と河野氏を支持すると号令。完全な後ろ盾になることは拒否したのだ。

「あ・うん」の呼吸で安倍氏も動き出す。2人にとっては、河野氏さえ落とせば、勝つのは岸田氏でも高市氏でもよかった。こうして先輩や若手議員、派閥も関係なく怒濤の電話攻撃が開始される。

「第2次安倍政権の12年から国政選挙を戦ってきた上で、誰のところに何回選挙応援や遊説したのか、全部メモしてあります。リストの名前に片っ端から電話を掛けると『ぜひとも頼むよ。一緒に戦った仲間だ』とだけメッセージを伝えます。そして2回目の電話では『高市さんは2着になる』と具体的な内容を付け加える。この『2着になる』とは、決選投票になれば岸田陣営とタッグを組んで勝利し、新総裁になるから便乗したほうがいいという意味なんです」(自民党関係者)

 永田町で「アベノフォン」と呼ばれ、スマホの着信画面に「安倍晋三」と名前が表示されると、議員たちは一様に震え上がったという。

*「週刊アサヒ芸能」10月14日号より。(2)につづく

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