岸田政権を誕生させた「三悪人」の野望(3)汚れ役を一手に担って…

 岸田新内閣が発足し、今後は強烈なリーダーシップが期待されるところだが、目の上のたんこぶの二階氏を叩き落としたことで、背後に鎮座する安倍氏の影響力はますます高まる勢いを見せている。

 総裁選前から2人の関係はあからさまだった。岸田氏は9月2日に出演したBS-TBSの番組内で、森友学園への国有地売却を巡る決算文書改ざんに関して、こう話している。

「国民は足りないと言っているわけだから、さらなる説明をしないといけない」

 この岸田氏の強気な発言に安倍氏がイラ立ち、高市氏の支援に回ったと噂が流れた。すると岸田氏は、舌の根も乾かぬ5日後に国会内で、

「再調査は考えていない」

 と、国民の目を気にすることなく、忖度してしまったのだ。

「もはや安倍氏に忠誠を誓ったようなもの。岸田政権が誕生したとはいえ、岸田派の46人に対し、安倍氏が所属する細田派は96人、麻生派は53人と数の上では圧倒的。当然、岸田氏は無視することはできず、討論会を重ねるうちに安倍氏と考え方が近い高市氏と意見が似てきた。そればかりか、安倍氏の宿願でもある憲法改正にやる気を見せ、『総理任期中に実現を目指したい。少なくとも目途はつけたい』と前のめりに踏み込んでいきました」(政治部デスク)

 わかりやすい岸田氏のヨイショに気をよくしたようで、総裁選の中盤には「高市氏より岸田氏を勝たせたいように見える」と安倍氏周辺がモヤモヤするほど、安倍氏の態度が変わっていったという。

「思い切って安倍氏の側近が、4人の候補者について評価を聞いたんです。そしたら野田聖子幹事長代行(61)を『あの人はどうしようもない』と寸評し、河野氏については『言っていることとやっていることが無茶苦茶。日本が大変なことになる』と渋い表情を見せた。そして高市氏と岸田氏についてはしばらく考えるように黙り込み、結局、最後まで何も言わなかったそうです」

 この自民党関係者は、本音では岸田氏だったのではないかと、受け止めた。

 ただし、あくまでも今回は岸田氏というだけで、高市氏が国会議員票114票を集めて大躍進したのも、全ては悪人コンビの絵図通りにコトが運んだからなのだ。

「これで誰も高市氏を『ポスト岸田』と疑わなくなりました。岸田-高市ラインが続けば、長期にわたってキングメーカーとして安倍氏の存在感は高まる。以前から周囲に『総理になると国会やマスコミの追及に時間を取られるので、総理を退いた上で影響力を保ち続けるほうが全てを実現させられる』と明かしていました。総理への再々登板のカードを安倍氏周辺が吹聴しているのも、もう立候補しないと明言すると影響力が途端に弱まるためです」(政治部デスク)

 安倍氏が以前から提唱する相手国の弾道ミサイル発射拠点を攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有など、時の傀儡総理とともに「終身総理」として実現していくことになるのだろうか。

 一方、総裁選で頭角を現し、新たな「悪人」として頭をもたげてきそうなのが、甘利明新幹事長(72)である。16年に金銭授受疑惑で経済再生担当相を辞任してからは「裏方」として安倍氏と麻生氏を支えていたが、派内から河野氏が出馬したことで表立って動けない麻生氏に代わり、汚れ仕事を一手に担った。

「いち早く岸田氏の支持を表明すると、派閥の会合で『菅さんじゃ選挙に勝てない!』と猛批判。敵が河野氏になると『菅総理が叩かれた一番の理由はワクチンの迷走だと言われているのに、ワクチン担当大臣の評価が上がるのはよくわからない』と講演で噛みつき、武闘派の一面を見せた。安倍氏とたびたび面会して作戦を練ると、その足で麻生氏に会い、橋渡し役としても暗躍。安倍・麻生コンビの猛プッシュで、岸田新政権の幹事長ポストは早い段階から確約されていました」(政治部記者)

 総裁選の渦中に「聞く力は誰よりも優れている」とアピールした岸田氏。「悪人」の話を聞きすぎて、早くもひれ伏す形で操り人形と化している‥‥。

*「週刊アサヒ芸能」10月14日より

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