岸田政権の支持率低下が止まらない。10月14日には時事通信が世論調査の結果を伝えたが、内閣支持率は27.4%と過去最低。テレビ朝日系列のANNが17、18日の週末に行った調査も33.1%でこちらも過去最低だった。
「菅さんの末期の支持率さえ下回る惨憺たる数字ですが、問題は自民党の支持率も下がっていること。かつて参院のドンと呼ばれた自民党の青木幹雄さんは、過去の経験則から内閣支持率と政権与党の支持率を足した数字が50ポイントを下回ったらその政権はもたないという、いわゆる『青木率』を提唱して政界ではこれを重視していますが、今回の数字は足して50.9ポイント。なので青木率に従えば、岸田政権は存亡ギリギリのところにあるということになります」(全国紙記者)
では岸田政権に浮揚の機会があるかと言えば、これはほぼ皆無だろう。国会は閣僚の国際会議への出席があったため異例の「中休み」を挟んだが、10月17日の衆院予算委員会を皮切りに再開した。旧統一教会、安倍元首相の国葬、物価高、旧・文書通信交通滞在費などの問題が山積で、岸田政権は針のむしろ状態になっている。
岸田首相には、やるべきことをやっていなくて、やらなくていいことをやっているという印象を持っている人が多いだろう。国葬が最たる例で、物価高対策で評価されているわけでもなく、旧統一教会問題では後出し説明ばかりの山際大志郎・経済再生担当大臣のクビが切れない。相変わらずの検討使なのだ。
さらにはエリザベス女王の国葬では、天皇皇后両陛下のほかに招待状が届いていないのに参列に意欲を示したかと思えば、不可能なのが分かって「取り止め」た経緯がある。そもそも大恥をかく前に、可能か不可能なのかを「聞こうとする力」はなかったのか。ところが安倍元首相の国葬については、最後は麻生太郎氏の「理屈じゃねえんだ」の一言で実行を決めたというくらいなのだから、よほど周囲に相談相手がいないのではないかと、心配すらしてしまう。
「内閣支持率が下がった時の最大の浮揚策は解散総選挙に打って出ることですが、となれば旧統一教会に近かった議員の公認は出来ない上に、従来はあった教会の選挙協力が得られないので大きな議席数を失う恐れがあって早期の解散はできないでしょう。となれば来春4月の統一地方選挙で自民が負けて、その後あるとすれば、岸田さんが地元広島のサミットで晴れの舞台を経験し、成果を上げた5月以降でしょうか」(同)
ただ悪いことばかりでもないという。選挙区の区割りを10増10減する法案の成立が自民党でメドがたっているが、選挙区が1つ減って一番揉めるであろう山口県は安倍元首相が不在になったことで案外丸く収まるかもしれない。それとこちらも安倍元首相の不在がもたらしたものだが、旧安倍派は後継者争いの暗闘がすさまじく、その分、岸田首相は最大派閥の意向からは自由になったように見える。それに岸田下ろしをしようにも、次のなり手もいなければキングメーカーも不在になった。
ならばダラダラと「黄金の3年」を享受して、その間に各政策にじっくり取り組める。黄金を光輝いたものにする時間的余裕はまだ残されているということか。
(猫間滋)