新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は9月30日をもって解除された。しかし、高校野球の秋季大会はその影響から抜け出せないようだ。
「秋季大会の開幕を遅らせた地区もあります。東海地区を例に挙げると、開幕は1週間遅れの10月30日。地区代表校を決める大会がコロナ禍で予定通りに消化できなかったからで、秋季地区大会が開催されるころ、新型コロナウイルスが再び猛威を振るっているかもしれません。出場辞退校が出た場合にどうするか、都道府県の高野連は頭を抱えています」(学生野球担当記者)
すでに準決勝、決勝の舞台となる球場を発表した県もあるが、三重県はちょっと違う。準決勝、決勝戦の球場を発表したところまでは同じだが、日程を決めなければならない9月中旬は緊急事態宣言下にあった。そのため、使用できない球場もいくつかあり、「1、2回戦は県内の高校グラウンドを使用する」と決めた。しかし、その会場となる高校名、試合開始時間等は伏せた。無観客試合と伝えても、コアなファンが押しかける可能性もあり、高校グラウンドが舞台となれば、学校関係者との見分けもつかなくなるからだ。
「三重県は今年の国体会場でしたが、感染防止を理由に中止を決めました。延長手続きをすれば6年後の開催権を確保できたんですが、それも見送りました。国内の学生、アマチュアのスポーツ大会の多くは中止となっており、高校野球だけ特別扱いだと思われるのも不本意なので」(同前)
無事に大会が終了することを祈るばかりだが、台風や雨天による影響で日程の延期にも備えなければならない。また、プロ野球スカウトも秋季大会の視察が難しくなるようだ。
「秋季大会を視察しておかないと、来年春の大会でどれだけ成長できたのかが判断できません。秋季大会は1、2年生の大会なので来年以降のドラフト会議に影響してきそう」(在阪球団スカウト)
いや、コロナ禍による影響は今秋のドラフト会議から出てくるだろう。
通常、スカウトは試合だけではなく、練習や練習試合も視察する。しかし、感染防止の観点から練習時間が昨年から激減しており、体力面や練習態度を調査する機会が奪われてしまった。
「甲子園や神宮大会で活躍した特定の高校球児に指名が集中するかもしれません。磨けば光る原石、大きな大会への出場機会に恵まれなかった球児を指名するのはちょっとコワイ」(同前)
学校のグラウンドも舞台となる秋季大会で、球児たちは本領を発揮できないかもしれない。それでも、大会が開催されることを喜ばなければならないのだから、気の毒な限りだ。
(スポーツライター・飯山満)